- HOME
- コラム
- ベストセラーからアメリカを読む
- アメリカでようやく根付き始めた日本のライトノベル
アメリカでようやく根付き始めた日本のライトノベル
こういった難問を解決するために Yen On が決めたのが「北米ではライトノベルを漫画と同じカテゴリで販売する」という戦略だった。業界専門家向けの雑誌パブリッシャーズ・ウイークリーでのPRでも、Yen On はライトノベルを「日本で発展したフィクション形式で、漫画とアニメの熱心なファンにアピールすることを意図している。......極めて会話とキャラクター中心に進められるページターナー」と説明している。
「特に初期のライトノベルの多くが漫画化されたこともあり、漫画と並べて販売してもらうのは、読者が見つけやすいという点でも道理にかなうし、非常にうまくいっている」とハスラー氏は言う。
Yen On の現在のトップセラーは『OVERLORD(オーバーロード)』で『SWORD ART ONLINE(ソードアート・オンライン)』がそれに続く。この2作を含めたいくつかの人気ライトノベルの読者を Amazon と Goodreads でチェックしたところ、ほとんどが漫画やアニメのファンであり、通常のYAフィクションの読者とは重なっていなかった。
ライトノベルの普及に貢献しているのも、YAファンタジーのファンではなく、インターネットやソーシャルメディアで活動する日本のアニメ・漫画ファンだ。140万人の視聴者を持つユーチューバーの The Anime Man(Joey) 氏は、「ライトノベルの初心者向けガイド(The Beginner's Guide To Light Novels)」で、ライトノベルを「漫画と小説の中間」とわかりやすく説明している。
英語圏(住む場所というよりも言語における)の漫画・アニメファンが口コミで広めやすい環境が整った現在、ライトノベルはようやくアメリカの市場に根づこうとしている。ハスラー氏によると過去3年で Yen On の売上は500%成長したという。
日本のライトノベルはようやくアメリカで根付こうとしているが、それは読者ターゲットを見極め、彼らの動向を理解したうえでのマーケティング戦略の成功と言えるだろう。
【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>
英王室から逃れたヘンリー王子の回想録は、まるで怖いおとぎ話 2023.01.14
米最高裁の中絶権否定判決で再び注目される『侍女の物語』 2022.07.02
ネット企業の利益のために注意散漫にされてしまった現代人、ではどうすればいいのか? 2022.03.08
風刺小説の形でパンデミックの時代を記録する初めての新型コロナ小説 2021.11.16
ヒラリーがベストセラー作家と組んで書いたスリル満点の正統派国際政治スリラー 2021.10.19
自分が「聞き上手」と思っている人ほど、他人の話を聞いていない 2021.08.10