遠くても訪れたい「こだわりの店」は時代も国境も超える...サラリーマン時代の「豆腐屋」の思い出
このような私のこだわりの店への愛情は、グルメ大国である日本でさらに深まっていった。
かつて勤務していたキッコーマンは、接待でのお店選びに社員が全身全霊を懸けている会社だった。ある先輩社員がこう教えてくれたときのことは忘れられない。
「(店主は)わざわざ遠出してドライブしてでも行きたくなるような店をつくるために、八王子と高尾山にこの店を開いたんだ。しかも豆腐屋なんだよ」
ピンときた読者もいるのではないだろうか。そう、「とうふ屋うかい」のことだ。
当時は「いつか、うかい亭に行きたい」と夢見て、その後、うかい亭の担当となり、自社製品が使われることになったというサラリーマン時代の誇りが詰まった、思い出の店でもある。そして今は客として年に一度は訪れているが、それも感慨深い。
ジョージアで芽生えた、このこだわりの店への愛情は今、ここ日本でさらに深まり続けているのだが、時間をかけてでも訪れたくなる店というものは、時代が移り変わっても、国を超えて共通しているのだと改めて実感している。
ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)
TEIMURAZ LEZHAVA
1988年、ジョージア生まれ。1992年初来日。早稲田大学卒業後にキッコーマン勤務を経て、ジョージア外務省入省。2021年より駐日ジョージア特命全権大使を務める。共著に『大使が語るジョージア』など。

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