処理水批判の中国から日本に観光客は来て...いる? 観光業界の「アフターコロナ」は「この後」幕を開ける
ただ、そう悲観することはない。今も日本の漫画を読み、日本食を楽しんでいる中国人はごまんといる。
団体客は周囲の目や政府の顔色をうかがい日本行きをキャンセルしたかもしれないが、おそらくこの記事が出る頃には、「汚染水」など信じぬ大勢の個人旅行客が日本を訪れ、星野リゾートなどの高級ホテルに宿泊し、海鮮丼やジャパニーズウイスキーに舌鼓を打ち、鎌倉の踏切で写真を撮っていることだろう。
日本はコロナ禍前、2030年までに訪日外国人客数を6000万人に増やすという目標を立て、観光立国を国策に掲げていた。その点から見れば、国慶節における中国人観光客数の減少は期待外れだったかもしれない。
しかし目標達成のためには、ただ新規の観光客を増やせばいいわけではないはずだ。さらなる環境整備を進め、より魅力的なサービスを提供してリピーターを育てなければ、一時的に目標数に達したとしても、いずれ飽きられてしまう。
であれば、深刻な人手不足の中、無理をして大勢の「旅行初心者」を相手にするのではなく、今は真の観光大国となるための準備期間と割り切って、訪日2度目、3度目の富裕層を丁寧にもてなし、「何があってもまた来たい」と思わせる素晴らしい体験を提供することに集中してはどうだろう。それが新たな観光客をも引き寄せる価値と魅力の創出につながるはずだ。
中国政府の政治的なパフォーマンスに本気で反論しても意味はないし、その必要もない。2~3カ月もすればきっと「処理水騒動」も収まっているだろう。
その時こそ本当の意味で、日本の観光業界の「アフターコロナ」が幕を開ける。
周 来友
ZHOU LAIYOU
1963年中国浙江省生まれ。87年に来日し、日本で大学院修了。通訳・翻訳の派遣会社を経営する傍ら、ジャーナリスト、タレント、YouTuber(番組名「周来友の人生相談バカ一代」)としても活動。
2025年1月21日号(1月15日発売)は「トランプ新政権ガイド」特集。1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響を読む
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