賃上げできない日本からは、外国人も減っていく
Kim Kyung-Hoon-REUTERS
<日本の低賃金は日本人にとって切実な問題だが、それだけではない。専門職など「高度人材」の外国人もいなくなり、外国から日本に来るのは観光客と投資家だけになるかもしれない>
最近、近所のコンビニやスーパーで働いているのは、ほとんどがベトナム人やネパール人。その中にバングラデシュやスリランカの人も交じっている。
以前は中国人が中心だったが、完全に入れ替わってしまった形だ。近所に限らず、東京ではこうした光景が珍しくなくなっている。
私が日本にやって来た1987年頃、日本で3日働けば、中国の1カ月分の収入が稼げると言われていた。35年がたち、両国の経済規模は逆転した。
日本では平均賃金が30年近く横ばいで、今ではOECD加盟国35カ国中24位。1位のアメリカの半分程度しかない。大手企業の給与に限って言えば、中国のほうが高いケースさえある。そんな国から来た若者たちが日本で低賃金の職に就くわけがない。
日本の平均賃金は、これからも低空飛行を続けるのだろうか。いまコンビニや工場で働いているベトナム人なども、いずれ自国経済が発展すれば、中国人同様わざわざ日本になど働きに来なくなるだろう。
日本は安全で暮らしやすいが、稼げる国かと言うとそうではなくなっている。日本の給料が上がらなければ、外国人労働者は必然的に減っていく。
日本政府が呼び寄せたい専門職などの「高度人材」も例外ではない。となれば、日本に来るのは安い物価に魅力を感じる観光客と投資家だけだ。
この低賃金問題、外国人がうんぬんという以前に、日本人にとって切実な問題のはずだ。物価高が家計を直撃し、今まさに賃上げが議論の的になっている。
年始には岸田文雄首相が経済界に賃上げを要請したが、果たしてどうなるだろうか。
経営者でもある私には、「そう言うおまえはどうなんだ」という声が飛んできそうなので、まずはそれに答えておきたい。
私が経営する通訳・翻訳の派遣会社は、報道分野が専門で、主な取引先はテレビ局や雑誌社という特殊な業態だ。そのため、スタッフにはもともと単価の高い賃金を払っている。
加えてここ数年は、業績の悪化したテレビ局から度々値下げの相談をされてきたが、それでもスタッフとして登録している通訳者に支払う賃金はできるだけ下げなかった。仕事で関わる人たちに対しては、その生活を守る努力をしてきた自負はある。