コラム

国内にはない「チャンス」が必ずある...日本人よ、「海外留学」を恐れるな

2022年06月02日(木)17時22分
トニー・ラズロ
石井健雄

ヨーデル歌手の石井健雄 PETER BISCHOFF/GETTY IMAGES

<「言葉の壁」を恐れる気持ちもわかるが、できるようになるのを待っていては一生無理。コロナ後は留学で世界の扉を開こう>

音楽に取り組む高校生から、「私、留学したほうがいいと思う?」と聞かれた。「イエス」と即答しかけた。世界で活躍できるチャンスがあるなら、そのチャンスをつかんだほうがいい。留学がそのチャンスをつかむきっかけになるかもしれない。ただ、「したほうがいいかどうか」よりも「したいかどうか」のほうが大切な質問だ。

コロナ前の2019年6月に発表されたある調査を思い出した。高校生の留学に関する意識調査で、日本、アメリカ、中国、韓国を比較したもの。日本の高校生は、「外国へ留学したいと思わない」と回答した人が5割弱いて、4カ国中で最も多かった。日本の若者は「内向き志向」だとよくいわれるが、その傾向を示す調査結果だと思う。

意識調査で挙げられた理由はいろいろある。「母国のほうが暮らしやすいから」も「面倒だから」も、「言葉の壁があるから」も述べられている。自分の国を離れて慣れない場所で暮らすのは、確かに面倒。言語面のハードルも無視できない。

日本人が持つ外国語に対する苦手意識を考えるとき、偉大な冒険家、植村直己が残した言葉が頭に浮かぶ。「英語ができない、フランス語ができないなどと言っていたら、一生外国など行けないのだ」

日本から離れてこそ日本の良さも問題点も分かるといわれるが、本当のことだ。と同時に、よその国の課題やグローバルな問題を自分ごとと捉えられるようになる。それができる人材は日本をさらに良い国にしてくれるし、その人自身の成長につながる。言葉の壁に負けず、もっと多くの日本の若者に世界へ挑戦してほしいと思う。

ドイツ留学がきっかけでまさかの歌手デビュー

僕は最近までベルリンで生活していたが、そこで出会った日本人をここで紹介したい。アルプス地方などを発祥とする歌唱法「ヨーデル」の歌手として、40年以上も前からドイツ語圏で活躍する石井健雄(写真)だ。

東京で生まれ育ち、レコードから独学でヨーデルを学んだ人だが、チャンスをつかめたのは、機械工学を学ぶためにドイツに短期留学したからだった。留学中にスイスに旅行した際、酒場で歌声を披露したら注目され、その後ドイツで歌手デビューした。

75歳となる今も活躍し続けており、17年にはコミカルな音楽作品で有名な米ユーチューバー「グレゴリー・ブラザーズ」と組んで、「チキンアタック(鶏攻撃の術)」という曲を発表。2400万回以上も再生された。

プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ロシアがICBM発射、ウクライナ空軍が発表 初の実

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部の民家空爆 犠牲者多数

ビジネス

米国は以前よりインフレに脆弱=リッチモンド連銀総裁

ビジネス

大手IT企業のデジタル決済サービス監督へ、米当局が
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 2
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 5
    「ワークライフバランス不要論」で炎上...若手起業家…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 8
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 9
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 10
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国」...写真を発見した孫が「衝撃を受けた」理由とは?
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    建物に突き刺さり大爆発...「ロシア軍の自爆型ドロー…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶり…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story