国内にはない「チャンス」が必ずある...日本人よ、「海外留学」を恐れるな
ヨーデル歌手の石井健雄 PETER BISCHOFF/GETTY IMAGES
<「言葉の壁」を恐れる気持ちもわかるが、できるようになるのを待っていては一生無理。コロナ後は留学で世界の扉を開こう>
音楽に取り組む高校生から、「私、留学したほうがいいと思う?」と聞かれた。「イエス」と即答しかけた。世界で活躍できるチャンスがあるなら、そのチャンスをつかんだほうがいい。留学がそのチャンスをつかむきっかけになるかもしれない。ただ、「したほうがいいかどうか」よりも「したいかどうか」のほうが大切な質問だ。
コロナ前の2019年6月に発表されたある調査を思い出した。高校生の留学に関する意識調査で、日本、アメリカ、中国、韓国を比較したもの。日本の高校生は、「外国へ留学したいと思わない」と回答した人が5割弱いて、4カ国中で最も多かった。日本の若者は「内向き志向」だとよくいわれるが、その傾向を示す調査結果だと思う。
意識調査で挙げられた理由はいろいろある。「母国のほうが暮らしやすいから」も「面倒だから」も、「言葉の壁があるから」も述べられている。自分の国を離れて慣れない場所で暮らすのは、確かに面倒。言語面のハードルも無視できない。
日本人が持つ外国語に対する苦手意識を考えるとき、偉大な冒険家、植村直己が残した言葉が頭に浮かぶ。「英語ができない、フランス語ができないなどと言っていたら、一生外国など行けないのだ」
日本から離れてこそ日本の良さも問題点も分かるといわれるが、本当のことだ。と同時に、よその国の課題やグローバルな問題を自分ごとと捉えられるようになる。それができる人材は日本をさらに良い国にしてくれるし、その人自身の成長につながる。言葉の壁に負けず、もっと多くの日本の若者に世界へ挑戦してほしいと思う。
ドイツ留学がきっかけでまさかの歌手デビュー
僕は最近までベルリンで生活していたが、そこで出会った日本人をここで紹介したい。アルプス地方などを発祥とする歌唱法「ヨーデル」の歌手として、40年以上も前からドイツ語圏で活躍する石井健雄(写真)だ。
東京で生まれ育ち、レコードから独学でヨーデルを学んだ人だが、チャンスをつかめたのは、機械工学を学ぶためにドイツに短期留学したからだった。留学中にスイスに旅行した際、酒場で歌声を披露したら注目され、その後ドイツで歌手デビューした。
75歳となる今も活躍し続けており、17年にはコミカルな音楽作品で有名な米ユーチューバー「グレゴリー・ブラザーズ」と組んで、「チキンアタック(鶏攻撃の術)」という曲を発表。2400万回以上も再生された。