北京五輪で思った。「君が代」の「君=あなた」でもういい
ところが最近になって、「君が代」に別の解釈があると知り驚いた。その解釈によると、「君」は天皇ではなく、あなたを意味し、「君が代は 千代に八千代に~」という歌詞は、身近な人の健康長寿を願うものだという。
そんなことはとっくに知っていた、という読者もいるかもしれないが、私は長谷川浩子さんという女性実業家から初めてその話を聞いた。ちなみに御年84歳の長谷川さんは、日本舞踊や長唄といった伝統芸能に精通する女傑である。
そもそも「君が代」は、私にとって不思議な歌だった。その旋律や歌詞が私の知る国歌の概念から懸け離れているからだ。
中国の「義勇軍行進曲」は、旋律が扇動的で、聞けば胸が騒ぎ鳥肌が立つ。歌詞も「いざ立ち上がれ」「敵の砲火に立ち向かえ」と勇ましい。フランスの国歌「ラ・マルセイエーズ」だって「市民よ、武器を取れ」と、闘志を奮い立たせるような歌詞だ。
それらと比べ、なんとノンビリしたことか。暗いと感じる人もいるようだが、雅楽的な旋律や「五、七、五、七、七」という和歌の調べは非常に美しく、なんとも平和的だ。
そんな「君が代」を国粋主義と結び付ける考え方は、いかにもばかげている。しかも「君」は天皇とは限らないという。
オリンピックは平和の祭典だ。平和的な国歌のほうがむしろふさわしい。もう「君=あなた」でいいんじゃないですか。
平和的な解釈がその真の意味として浸透すれば、もっと多くの日本人が素直に斉唱できるようになる。そしてこの歌が平和国家の象徴となる日も来るのではないだろうか。
周 来友
ZHOU LAIYOU
1963年中国浙江省生まれ。1987年に来日し、日本で大学院修了。通訳・翻訳の派遣会社を経営する傍ら、ジャーナリスト、タレント、YouTuber(番組名「地球ジャーナル ゆあチャン」)としても活動。
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