「よい誤解」だから許される? 日本の「ハーフ観」はご都合主義だ
また、いわゆるアイデンティティー・クライシスに悩む人もいる。わが家について言えば、今のところ子供たちはアイデンティティーのことで悩んでいる様子はないが、父親である私のほうには、中国にもっと興味を持ってもらいたいという悩みがある。
これら「ハーフ」にまつわる悩みや葛藤は、個人や家庭の問題と切り捨てていいものではない。そこには日本人の普遍的な価値観も投影されているからだ。
私が最近驚いたのは、大坂なおみ選手に対する日本社会の反応だった。テニスで大活躍すると「日本人初!」などと快哉を叫ぶのに、BLM(ブラック・ライブズ・マター=黒人の命は大事)運動支持の発言をすると、まるで日本人ではないかのように距離を置く。
日本のイメージにプラスになるときだけ日本人扱いするなんて、ご都合主義が過ぎるのではないだろうか。
「混血」の人を「ハーフ」と呼ぶべきでない、むしろダブルだ、ミックスだなど、その呼称についても議論されるようになって久しい。しかし日本人の「ハーフ観」は相変わらず現実とずれたままだ。
少子化が止まらない日本は、もう「純日本人」だけでは成り立たない。そろそろ日本人の「ハーフ観」も、実際に即したものへとアップデートさせるべきではないだろうか。
周 来友
ZHOU LAIYOU
1963年中国浙江省生まれ。87年に来日し、日本で大学院修了。通訳・翻訳の派遣会社を経営する傍ら、ジャーナリスト、タレント、YouTuber(番組名「地球ジャーナル ゆあチャン」)としても活動。