外国人もコロナ支援の対象にした日本は、もっとそれをアピールするべき
全体的に留学生が日本社会に溶け込むことは難しく、またそうした意欲も薄いという雰囲気の時代だった。当時その寮は国費留学生しか入居できなかったので、日本政府がこれだけお金を使って留学生を集めて、結局、日本について理解を深めないまま多くが帰国するのでは、日本国民の税金がもったいない、と当の留学生の1人ながら思ったことを記憶している。
その時代と比べれば、日本社会の雰囲気も、留学生たちの意識も大分変わった。
確かに今回問題になった「日本に将来貢献するような人材に限る」という言葉は傲慢に聞こえるし、「貢献できない人間は不要だ」と冷たく切り捨てているようでもある。ただこの冷たく聞こえる言葉は、裏を返せば日本政府そして日本社会が留学生たちにかける強い期待の表れだとも言える。
であれば、むしろ「皆さんを単なるお客さんと考えてはいません。より多様で、より豊かな社会になるよう、ここで協力してほしい」とのメッセージが伝わるようにしてはどうか。その上で、今後さらに留学生支援を拡充してくれたら、と元留学生の1人として思う。
李 娜兀
NAOHL LEE
国際交流コーディネーター・通訳。ソウル生まれ。幼少期をアメリカで過ごす。韓国外国語大学卒、慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程単位取得(政治学専攻)。大学で国際交流に携わる。2人の子供の母。
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<本誌2020年6月23日号掲載>
2020年6月30日号(6月23日発売)は「中国マスク外交」特集。アメリカの隙を突いて世界で影響力を拡大。コロナ危機で焼け太りする中国の勝算と誤算は? 世界秩序の転換点になるのか?