コロナ危機でも日本人が求める「安心、安全、安定」
日本人は違う。親や先生、上司、政府などの言うことをよく聞くし、他人を気にする。また今回の危機に限らず、日本人はいつも「3つの安」を求める。「安心、安全、安定」だ。安心してもらうことが大事だから、どんな状況でも日本の政治家は「3つの安」を約束しがちだ。日本では、平和な時期に「戦争」の単語は使いにくいと思う。歴史の問題だけでなく、国民のパニックにつながるリスクもあるからだ。
個人的に心配していることは2つある。まず3月19日の記者会見で専門家が指摘したように、新型コロナウイルスの感染者や濃厚接触者への差別や偏見があること。ウイルスが原因で亡くなった人の遺族は差別を恐れているという。許されないことだから、政府は何らかの対策を取ってほしい。誰もが数万人以上が感染してしまう可能性があると、国民にはっきり言うべきだ。
もう1つは東京オリンピック・パラリンピックの開催の問題。延期が決定されたが、本当に1年以内で今の危機を克服し五輪を楽しめるのかは疑問だ。
西村カリン
KARYN NISHIMURA
1970年フランス生まれ。パリ第8大学で学び、ラジオ局などを経て1997年に来日。AFP通信東京特派員となり、現在はフリージャーナリストとして活動。著書に『不便でも気にしないフランス人、便利なのに不安な日本人』など。
<本誌2020年4月7日号掲載>
2020年4月7日号(3月31日発売)は「コロナ危機後の世界経済」特集。パンデミックで激変する世界経済/識者7人が予想するパンデミック後の世界/「医療崩壊」欧州の教訓など。新型コロナウイルス関連記事を多数掲載。