関税ショックは株だけじゃない、米国債の信用崩壊も始まった
Why US Treasuries Sell-Off Is Nightmare Scenario for the Economy

(写真はイメージです) Dkoi-Shutterstock
<4月9日、相互関税発動後半日も待たずに中国以外「90日間の停止」を発表。米株価は持ち直したが、理不尽で唐突なトランプのやり方はアメリカにとってもっと大事なものを失わせている>
約29兆ドル規模の米国債市場は、世界の外貨準備から企業の借入コストに至るまですべての基本であり、金融システムの根幹を支えてきた。この市場が不安定化すれば、世界中の金融市場が急激に収縮しかねない。
仮に米国債への信頼がさらに損なわれれば、金利が上昇してアメリカ政府の債務負担は重くなる。慢性的な財政赤字と地政学的緊張が続く中で、一層財政難が厳しくなるだろう。
トランプ大統領による相互関税と、それに対する各国の対抗措置への懸念が、ここ数日市場を揺さぶってきた。インフレ圧力の高まりが、アメリカ経済を景気後退に追い込むとの見方も広がっている。
米国債は、政府の歳出が歳入を上回る際に、財務省が発行する債券だ。利回り(=金利)は、高率の相互関税が発動された9日未明に大きく跳ね上がった。トランプの関税発動を受け、多くの投資家が国債を売却したからだ。
10年債の利回りは4.5%超に急騰。30年債は5%を超え、2年債も一時3.8%を上回った。
「米国債は、世界の不安定な情勢の中で、最後の安全な投資先とされていた」と語るのは、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの政治経済学教授ポール・ド・グラウエ。「だが今や、アメリカ政府自体が最大の不確実性の源になった。米国債に代わる安定資産を探すのは当然だ」