最新記事
荒川河畔の「原住民」(25)

封建時代の「浪人」が現代のホームレスになった? 日本のホームレス史をたどる

2025年3月20日(木)11時05分
文・写真:趙海成
日本のホームレスや生活貧困者たち

公園の吹き出しに並んで無料の食べ物を受け取るホームレスや生活貧困者たち

<「ホームレス」という言葉はもともと日本になかった。現代日本のホームレスは、どのような形で変遷してきたのか。在日中国人ジャーナリスト趙海成氏の連載ルポ第25話>

まず、読者からの質問に回答したい。

ある読者は、私のこのシリーズがなぜ荒川河川敷のホームレスを「荒川河畔の『原住民』」と呼んだのかという疑問を抱いている。「原住民」とは、その土地に古くから定住していた人々のことではないだろうかと。

この読者の言うとおりだ。ホームレスは確かに「原住民」ではない。両者には根本的な違いがある。

原住民は、その地域に最初に定住した民族や集団で、自分たちの独自の言語、宗教、習慣、文化的伝統を保持することが多い。これらの特徴は現代のホームレスには備わっていない。

しかし、生活の面から見れば、ホームレスのいくつかの特徴が原住民に似ていると言える。

なぜ私は荒川のホームレスを「原住民」と呼ぶか

荒川河川敷のホームレスを例に取ると、彼らの生き方は原始的で、毎日野宿をしている。

住んでいる「家」はお粗末な小屋だし、時には野生動物が訪ねに来たり、台風や豪雨によって吹き飛ばされることもある。また、彼らの活動範囲は狭く、外との交流も少ない。

こうした特徴が私たちのイメージする、いわゆる昔の「原住民」と似ていると言えないだろうか。

このシリーズに登場した主人公の2人――桂さんと征一郎さん(共に仮名)は、荒川の近くに生まれて、幼い頃から住んでいる。名実ともに「荒川の原住民」だ。

そんなわけで、私はこのシリーズのタイトルを「荒川河畔の『原住民』」と付けたのである。

展覧会
奈良国立博物館 特別展「超 国宝―祈りのかがやき―」   鑑賞チケット5組10名様プレゼント
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

KBN3FX2AI

ビジネス

3月ロイター企業調査:「変更なし」が77%、多様性

ワールド

トルコ各地で抗議デモ、イスタンブール市長拘束に反発

ワールド

ロシア、国際安保会議に米を招待へ=ショイグ安全保障
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平
特集:2025年の大谷翔平
2025年3月25日号(3/18発売)

連覇を目指し、初の東京ドーム開幕戦に臨むドジャース。「二刀流」復帰の大谷とチームをアメリカはこうみる

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研究】
  • 4
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 5
    「若者は使えない」「社会人はムリ」...アメリカでZ…
  • 6
    失墜テスラにダブルパンチ...販売不振に続く「保険料…
  • 7
    【クイズ】世界で2番目に「レアアース」の生産量が多…
  • 8
    「気づいたら仰向けに倒れてた...」これが音響兵器「…
  • 9
    古代ギリシャの沈没船から発見された世界最古の「コ…
  • 10
    自分を追い抜いた選手の頭を「バトンで殴打」...起訴…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中