「カナダのトランプ」が失速した原因は本家トランプ?

Trump Shoots Himself in the Foot

2025年3月18日(火)17時10分
ケビン・イン

この男、トルドー政権に先立つ保守党スティーブン・ハーパー政権では野党攻撃の先鋒を務めていた。下野してからも、インフレや住宅価格の高騰はトルドー政権による強引な「脱石油」政策のせいだという根拠なき主張を展開してきた。その主張はカルガリー大学の研究者らによって否定されたが、石油産業に依存する地方部を中心に支持を伸ばし、10月までに行われる次期総選挙では保守党の政権奪還が確実視されていた。

ナショナリズムに着火

しかし、1月20日にアメリカ大統領に返り咲いたトランプの暴言で流れが変わった。国内の経済問題を重視して与党・自由党を批判していた世論が、一転して隣国アメリカとの外交関係に目を向け、親トランプの保守党に強い逆風が吹き始めた。


「カナダを米国51番目の州に」というトランプ発言に抗議するカナダの人々

「カナダを米国51番目の州に」というトランプ発言に抗議するカナダの人々(オタワ、3月8日) ARTUR WIDAKーNURPHOTOーREUTERS


トランプはカナダからの輸入品全てに25%の関税を課すと宣言し、カナダの首相を「知事」と呼び、カナダはアメリカの51番目の州になるべきだとの主張を繰り返した。これでカナダ国民のナショナリズムに火が付き、自由党の支持率が急回復した。

トランプの口先攻撃はほとんど効かず、むしろ中道左派の自由党の支持率上昇に貢献した。そしてカナダ国内の親トランプ派は軌道修正を余儀なくされた。

一連の暴言でカナダ国民を敵に回していなければ、カナダには遠からず親トランプ政権が誕生していたはずだ。カナダは昔から外交面でアメリカに従属的であり、もしもポワリエーブル率いる保守党が政権を握れば、トランプ政権にとって最も近しい同盟国になると思われていた。

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