劣化ウランの有効活用にも...世界初「ウラン蓄電池」開発に成功、実用化への期待と課題

ウラン蓄電池の放電試験で、蓄電池に接続したLED(写真右上「X」の文字あたり)が点灯。放電を確認できた 日本原子力研究開発機構提供
<充放電を10回繰り返しても性能にほとんど変化なし。実験に使用されたのは天然ウランだったが、化学的性質が同じ劣化ウランも電池の材料にできる>
日本原子力研究開発機構(JAEA)は13日、原子力発電などで用いられる放射性物質ウランを使った蓄電池の開発に世界で初めて成功したと発表した。実用化できれば「劣化ウラン」を有効活用し、再生可能エネルギー発電で余った電力をためる蓄電池としての役割が期待できるという。
試作した蓄電池は幅約10センチ、高さ約5センチで、ウランを負極、鉄を正極に採用。起電力は1.3ボルトで、一般的なアルカリ乾電池(1.5ボルト)と近い値になった。発光ダイオード(LED)につなぐと点灯し、蓄電池に貯めた電気を取り出せることが確認された。
さらに充放電を10回繰り返しても性能がほとんど変化せず、両極ともに電解液中に析出物(せきしゅつぶつ)もなかったことから、安定して使える可能性が示された。今回の実験に使用されたのは天然ウランだが、劣化ウランも化学的性質は同じなので同様に電池の材料にできる。
劣化ウランは原発の燃料製造時の副産物だ。天然ウランには主にウラン235とウラン238が存在するが、核分裂を起こしやすく原発の燃料に使えるウラン235は0.7%程度。そのため、燃料製造時にウラン235の含有率を3~5%まで高める「濃縮」を行う。その際、副産物として天然ウランよりもウラン235の含有率が低い劣化ウランが生じる。
今の原子炉(軽水炉)の燃料には使用できないため、「燃えないウラン」とも呼ばれる。次世代原子炉の一つである高速増殖炉で新たな核燃料に変換できるとされるが、国内では研究用原子炉「もんじゅ」の廃炉が決定し、現状は利用用途がない。
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