劣化ウランの有効活用にも...世界初「ウラン蓄電池」開発に成功、実用化への期待と課題
劣化ウランの国内の貯蔵量は約16000トンにのぼり、核分裂反応を起こす危険性はほぼないものの放射性物質として管理する必要があるため、有効な活用法が求められている。
ウラン蓄電池の概念は2000年代初頭には提案されていた。従来は正負極ともにウランが想定されていたが、今回JAEAは正極に鉄を使うことで電解液を安定化し、電圧の向上に成功した。
研究チームは「ウラン蓄電池を非常用電源として使えば、原子力発電の安全な利用にもつながる」と話し、25年度以降、タンクに入れた電解液をポンプで循環させることで蓄電量を増やせる「レドックスフロー電池」として開発を進める。
ただし、今のところウラン蓄電池が設置可能な場所は、原発敷地内や燃料の加工施設などの放射線管理区域に限られる。
[筆者]
茜 灯里(作家・科学ジャーナリスト)
作家・科学ジャーナリスト/博士(理学)・獣医師。東京生まれ。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第 24 回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版のウェブ連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)など。