最新記事
宇宙開発

「イプシロンS」爆発で壊れた試験設備の復旧はいつに? 試験失敗の原因究明も前進

2025年2月26日(水)13時55分
茜 灯里(作家・科学ジャーナリスト)
種子島宇宙センター竹崎局から撮影した「イプシロンS」試験画像

種子島宇宙センター竹崎局から撮影した試験画像(2024年11月26日) 宇宙航空研究開発機構(JAXA)

<JAXAのロケット燃焼試験爆発事故から3カ月。調査チームは予想される爆発過程のシナリオを新たに公表した>

JAXA(宇宙航空研究開発機構)は25日、昨年11月に起きた新型固体燃料ロケット「イプシロンS」の2段目エンジンの第2回燃焼試験中の爆発事故で損傷した試験設備について、今年秋頃の復旧完了を目指すと見通しを明らかにした。試験再開やイプシロンSの打ち上げ時期は未定という。

事故は24年11月26日にJAXA種子島宇宙センター(鹿児島県)で発生した。試験では、イプシロンSの3段構成のうち第2段のエンジンを2分間燃焼する予定だったが、点火約49秒後に爆発。人的被害はなかったものの、機体や実験施設は壊れ、破片は海まで飛び散った。

イプシロンSは2022年に運用を終了した「イプシロン」の改良型で、24年度内の初号機打ち上げを目指していた。23年7月にJAXA能代ロケット実験場(秋田県)で実施した第1回燃料試験でも爆発が起こり試験棟は全焼。こちらの再建には数年かかる見込みだ。

国内で同様のエンジン燃焼試験が行えるのは能代と種子島のみで、打ち上げ準備に必須の試験再開には能代よりも早期の復旧が見込まれる種子島の再建が必要不可欠だ。JAXAは作り直しが必要なものと安全確認の上そのまま使うものを見極めつつ、作業を進めている。

一方、原因調査チームによると、爆発事故で破損した機体は陸上に飛散した部品の回収は完了し、引き続き海中の探索が進められている。

事故原因の特定には至っていないが、爆発発生にはエンジンからの燃焼ガスの漏洩が関わっていると推定されている。調査チームは今回、漏洩の原因について、想定外の熱が加わり①エンジンケースの内側にある断熱材が損傷し、ケースが溶融した、②断熱材の損傷でエンジンケースと燃焼ガスの噴出装置を接続する金属部品が破断した、という2通りの漏洩に至るシナリオを公表した。

キャリア
企業も働き手も幸せに...「期待以上のマッチング」を実現し続ける転職エージェントがしていること
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

アングル:米国債利回り上昇にブレーキ、成長懸念や利

ビジネス

ミュンヘン再保険、LA山火事の保険金請求13億ドル

ビジネス

日本郵便がトナミHDにTOB 1株1万0200円、

ビジネス

欧米ステランティス、25年は増収・キャッシュフロー
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:破壊王マスク
特集:破壊王マスク
2025年3月 4日号(2/26発売)

「政府効率化省」トップとして米政府機関に大ナタ。イーロン・マスクは救世主か、破壊神か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    富裕層を知り尽くした辞めゴールドマンが「避けたほうがいい」と断言する金融商品
  • 2
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チームが発表【最新研究】
  • 3
    障がいで歩けない子犬が、補助具で「初めて歩く」映像...嬉しそうな姿に感動する人が続出
  • 4
    東京の男子高校生と地方の女子の間のとてつもない教…
  • 5
    「縛られて刃物で...」斬首されたキリスト教徒70人の…
  • 6
    日本人アーティストが大躍進...NYファッションショー…
  • 7
    見逃さないで...犬があなたを愛している「11のサイン…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 10
    イスラム×パンク──社会派コメディ『絶叫パンクス レ…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 5
    障がいで歩けない子犬が、補助具で「初めて歩く」映…
  • 6
    富裕層を知り尽くした辞めゴールドマンが「避けたほ…
  • 7
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 10
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中