USAID消滅で中国・ロシアが勢力拡大へ...失われるアメリカの影響力
THE ATTACK ON USAID
とはいえ、今のところUSAIDは事実上、閉鎖されたも同然だ。
アメリカの対外援助は伝統的に超党派の支持を得てきた。援助総額は世界最大だが、連邦政府の予算に占める割合は比較的小さく、開発・人道援助と軍事援助などを含めて1%にすぎない。うち60%前後がUSAIDに割り当てられている。
長らく保守派の標的に
USAIDは、1961年にジョン・F・ケネディ大統領が署名した大統領令と同年の対外援助法によって設立された。そして、98年に施行された外務改革・再構築法により国務省から独立した機関となった。
しかしUSAIDは長年、保守派からの批判の標的となってきた。2019年には同庁の監察官も、資金提供するプログラムの成果が不十分だと指摘している。対外援助を擁護する人々からも同様の意見が上がっており、開発支援のプラットフォーム、アンロック・エイドのウォルター・カー事務局長は同庁の改革を求めてきた。しかし、カー氏は現時点での「最優先事項」は「人命を救う支援を再開することだ」と述べる。
世界で最も裕福な人物であるマスク氏は、対外援助の是非やUSAIDの予算配分を批評するにとどまらない。最近では根拠のない陰謀論めいた発言を繰り返し、同庁が「新型コロナウイルスを含む生物兵器の研究に資金を提供し、何百万人もの命を奪った」とさえ主張した。