「掘って掘って、掘りまくれ」トランプ2.0のアメリカは石油人脈が仕切る
THE OIL INDUSTRY WISH LIST
自動車業界と利害対立?
APIは石油・ガスの掘削や輸送の過程で排出されるメタンガスに対する課金の廃止も求めている。メタンは天然ガスの主成分だが、二酸化炭素以上に強力な温室効果ガスであり、掘削現場や輸送管からの漏洩で大気中に放出されている。
高感度の観測衛星などにより、漏洩メタンが大気中のメタン濃度を押し上げていることも判明している。昨年夏には上空からの観測で、米国内の石油掘削現場からのメタンガス排出量が石油業界の自主規制値の8倍に上ることが分かった。
また7月にオンライン学術誌フロンティアズ・イン・サイエンスに掲載された研究によると、大気中のメタン濃度の増加率は「従来の想定ペースを上回っている」という。
ソマーズによれば、業界もメタン排出の抑制に取り組んでおり、一定の規制が必要なことは理解しているが、それでも排出量への課金には反対だという。
そんなことをすれば「アメリカ経済の原動力となっているこのエネルギー源の生産が、いずれ減少に転じかねない」からだ。
APIは自動車業界への規制にも言及している。具体的には、バイデン政権下の環境保護庁(EPA)が昨年3月に出した厳しい排ガス規制の廃止を求めている。
しかし、これは電動化に莫大な投資をしてきた自動車産業の利害と対立してしまう恐れがある。