最新記事
ウクライナ

欧州だけでも「十分足りる」...トランプがウクライナ支援から手を引いても「問題ナシ」と言い切れる理由

IS IT THE HOUR OF EUROPE AGAIN?

2025年1月21日(火)17時09分
ダニエル・グロー(欧州政策研究センター研究部長)
ウクライナ国旗と欧州旗

ヨーロッパとウクライナは一心同体 KRISZTIAN ELEKーSOPA IMAGESーREUTERS

<欧米のウクライナ支援額はGDPから見ても「かすり傷にもならない」微々たる額。「金銭的負担」は支援停止の言い訳にしかならない──>

今こそヨーロッパの出番だ──。ルクセンブルクのポース外相(当時)が誇らしげにそう言ったのは1991年の夏。既にソ連は緩慢だがほぼ平和的な崩壊に向かっていた。しかしバルカン半島のユーゴスラビアでは民族間の緊張が高まりつつあった。

ユーゴスラビアはヨーロッパの連邦国家であるため、ポースらは仲介役として現地に出向いた。右の言葉は、現地の空港に降り立った彼が発したもの。あいにくバルカン半島では、その後10年以上も民族間の殺戮が続いたのだが。

以来約30年、ヨーロッパでまた別の国が分断と崩壊の危機に瀕している。ウクライナだ。ポースの夢を受け継ぐなら、今度こそヨーロッパの出番だ。一致して立ち上がり、ウクライナを救わねばならぬ。


ヨーロッパには自分の安全を守る努力が足りないと、アメリカ大統領に復帰したトランプは言う。まあ、一理はある。そもそも欧州諸国だけでウクライナを守れるわけはなく、軍事支援では一貫してアメリカが主導的な役割を果たしている。

それは事実だ。しかしヨーロッパの真摯な貢献を忘れてもらっては困る。

キール世界経済研究所(ドイツ)によると、ヨーロッパ(EU本部とその加盟諸国+ノルウェー+イギリス)によるウクライナ支援の金額はアメリカを上回る。

昨年末時点でアメリカの拠出額は880億ユーロ(約910億ドル)だったが、ヨーロッパは1250億ユーロ(約1280億ドル)。またヨーロッパは今後数年、約1200億ユーロの追加拠出を決めているがアメリカのウクライナ支援の行方は不透明だ。

自動車
DEFENDERの日本縦断旅がついに最終章! 本土最南端へ──歴史と絶景が織りなす5日間
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米国との取引は国益に沿う場合のみ合意、英首相が強調

ビジネス

トランプ氏、日鉄のUSスチール買収巡り再審査を指示

ビジネス

米国株式市場=ダウ・S&P続落、関税巡り乱高下 ト

ワールド

トランプ氏、日本との通商交渉責任者にベッセント財務
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ関税大戦争
特集:トランプ関税大戦争
2025年4月15日号(4/ 8発売)

同盟国も敵対国もお構いなし。トランプ版「ガイアツ」は世界恐慌を招くのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 2
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼
  • 3
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 4
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    5万年以上も前の人類最古の「物語の絵」...何が描か…
  • 7
    【クイズ】日本の輸出品で2番目に多いものは何?
  • 8
    「最後の1杯」は何時までならOKか?...コーヒーと睡…
  • 9
    ロシア黒海艦隊をドローン襲撃...防空ミサイルを回避…
  • 10
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中