「2国家解決」で歴史に名を残したい、2人の思惑が合致するとき...サウジの「外交Xデー」はあるのか?

HOUSE OF CARDS

2025年1月16日(木)15時52分
トム・オコナー(外交問題担当副編集長)

サウジは長年、アメリカと緊密に連携してきたが、今では独自の影響力を行使できる立場にある。

イスラム教の2大聖地メッカとメディナの守護者としてのアラブ世界とイスラム世界での特別な影響力。アラブ連盟、湾岸協力会議(GCC)、イスラム協力機構(OIC)でも主導的地位にある。20カ国・地域(G20)で最も急成長している国の1つで、中国とロシアが主導するBRICSへの加盟も目前に迫っている。


「他国の利益を損なわずに関係を多様化することで、サウジは国際的課題を克服し得る、信頼できるパートナーになった」とシュダディは言う。

「アメリカの新政権がこの変化に合わせ、地域と世界の安定に資する形でサウジとの戦略的パートナーシップの利益を確保する政策を採用できるかどうか。それが真の課題だ」

一方、イランはBRICSに加盟済みで、やはり中国とロシアが主導する上海協力機構(SCO)の正式メンバーでもある。

それでもシーア派の革命政権であるイラン・イスラム共和国と愛国主義的なスンニ派のサウジアラビア王国との間には根深い確執があり、両者は今も中東での影響力を競い合っている。

サウジ側にはイランの核開発計画加速に対する懸念もある(当のイランは大量破壊兵器の獲得を目指さないと断言している)。

イランのウラン濃縮や遠心分離機製造などを規制する包括的共同作業計画(イラン核合意)は、第1次トランプ政権が18年5月に離脱を表明し、崩壊の危機にある。

サウジも当初は合意に懐疑的だったが、最近の両国関係の変化を受けて、こうした合意の利点を認識するようになった。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

カーニー元カナダ中銀総裁、トルドー首相の後任に立候

ビジネス

米国株式市場=小反落、企業決算に注目

ビジネス

リオ・ティントとグレンコア、統合の可能性巡り協議 

ビジネス

労働市場の安定化に安心感─米シカゴ連銀総裁=報道
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 2
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の超過密空間のリアル「島の社交場」として重宝された場所は?
  • 3
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 4
    ロス山火事で崩壊の危機、どうなるアメリカの火災保険
  • 5
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 6
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 7
    トランプの「領土奪取」は暴論にあらず。グリーンラ…
  • 8
    トランプさん、グリーンランドは地図ほど大きくない…
  • 9
    韓国ユン大統領、逮捕直前に気にしていたのは意外にも…
  • 10
    韓国の与党も野党も「法の支配」と民主主義を軽視し…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    ロシア兵を「射殺」...相次ぐ北朝鮮兵の誤射 退却も阻まれ「弾除け」たちの不満が爆発か
  • 4
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 5
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「…
  • 6
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 7
    トランプさん、グリーンランドは地図ほど大きくない…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    古代エジプト人の愛した「媚薬」の正体
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中