イランの弱体化でトランプは中東安定化の好機を生かせるか

MIDDLE EAST

2024年12月26日(木)13時10分
デニス・ロス(ワシントン中近東政策研究所)

だがハメネイが何より重視しているのはイランの現体制の存続であり、それが脅かされれば戦術的な調整も行う。それゆえイランがトランプと交渉を行うため、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に仲介を頼んだとしても、特段驚きはない。交渉が実現するか、実現しても実りのある内容になるかは分からないが、交渉が行われる可能性は排除できない。

たとえ交渉が実現しなくとも、「抵抗の枢軸」が弱まり、中東における力の均衡が変化しつつある今、この地域の国々および諸勢力の相互関係が変化する可能性はある。米中央軍(CENTCOM)は既に中東における防空・ミサイル防衛協力の枠組みづくりに成功している。この枠組みにはサウジアラビアを含むアメリカと同盟関係にある全てのアラブ諸国に加え、イスラエルも参加している。トランプ政権1期目には中東版NATOの創設案が議論されていたことも思い出してほしい。


地域の防衛協力強化の流れは今後も続くだろう。2期目のトランプ政権はより広範な経済協力の枠組み構築(1期目にトランプの娘婿ジャレッド・クシュナーが主導していた構想だ)も推進するだろう。

トランプは、アブラハム合意の拡大にも意欲を見せている。これはUAEを皮切りにアラブ諸国などが次々にイスラエルと結んだ国交正常化の合意で、トランプはサウジアラビアにもイスラエルと国交を結ばせたいと考えている。

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