イランの弱体化でトランプは中東安定化の好機を生かせるか
MIDDLE EAST
サウジアラビアはバイデン政権に対しイスラエルとの国交正常化の条件として、自国とアメリカとの2国間防衛協定の締結と、パレスチナ国家樹立に向けて米政府が確実に道筋をつけることを挙げた。問題はトランプがこの要求を満たせるかだ。防衛協定の締結には議会の承認が必要だし、ネタニヤフは政権内の極右の反発を恐れ、パレスチナ国家との共存の可能性を頑強に拒否している。
いずれにせよサウジアラビアはガザ戦争が続いている限り、イスラエルとの関係を正常化しないだろう。イスラエル軍は残る人質の解放のためにも停戦交渉を進めたいようだ。ネタニヤフの考えは分からないが、トランプは自分が就任するまでに戦闘が終息していることを望むとネタニヤフに言い渡したので、停戦に向けて重い腰を上げるかもしれない。
要は、サウジアラビアとイスラエルが国交を正常化すれば、中東情勢は一変する、ということだ。バイデンが残された時間でその課題を達成できなければ、就任1年目にトランプが達成を目指すだろう。たとえ達成できなくとも、イスラエルがヒズボラとハマスを大幅に弱体化させ、イランの影響力も低下した今、和平の実現はともあれ、中東の安定化が進む条件は整っている。