イランの弱体化でトランプは中東安定化の好機を生かせるか
MIDDLE EAST
トランプの対イラン政策は「最大限の圧力」であり、目的は必ずしも体制変革ではなく行動を変えることだ。イスラエルの軍事力による威嚇とイラン産原油への制裁強化を通じて、新たな核合意の可能性を探るシナリオは十分にあり得る。イランとのディール(取引)は第2期政権の目標の1つだと、トランプは繰り返し発言している。
確かにトランプ政権1期目には、イランはトランプとの取引に応じる意思をほとんど見せなかった。トランプの最大限の圧力に、イランは最大限の抵抗で答えた。サウジアラビアの最も重要な石油施設を攻撃し、自国が支援するイエメンのイスラム教武装組織フーシ派にもサウジアラビアへのミサイル攻撃を実施させた。業を煮やしたトランプは、イラン革命防衛隊の精鋭部隊を率いるガセム・ソレイマニの殺害を命じた。
以後イランは慎重になり、1期目のトランプ政権が終わるまでは、核開発の推進や代理勢力を使ったイラクとシリアの駐留米軍への攻撃強化を見合わせた。そして2期目のトランプ政権が発足しようとしている今、イランの代理勢力はトランプ1期目と比べ大幅に弱体化している。
イランは2期目のトランプとの取引に応じるだろうか。ハメネイは常々アメリカはイランの譲歩だけでは満足せず、イランの現体制を倒そうとしていると述べているから、現時点では取引成立は望み薄なようだ。