最新記事
荒川河畔の原住民⑭

突然姿を消した荒川ホームレスの男性 何が起こったのか、残された「兄弟」は...

2024年12月4日(水)19時20分
文・写真:趙海成
荒川河川敷のホームレス

斉藤さん(仮名)はある日の夕方、自転車で家を出たまま戻ってこなかった

<兄弟分のように仲がよかった2人のホームレス男性。在日中国人ジャーナリストの趙海成氏が久しぶりに荒川河川敷の彼らを訪れると、1人が姿を消していた>

※ルポ第13話:ホームレスは助け合うのか、それとも冷淡で孤独なのか...不思議な「兄弟分」の物語 より続く


私はもう2カ月も桂さんと斉藤さん(共に仮名)の元を訪れていない。

3月下旬の晴れた日、自転車に乗って荒川鉄道の橋の下の小さな森に向かった。

そこは以前よりも整然とした感じになり、林の中のクルミの木の幹がいくつも切られ、地面の雑草も多く取り除かれていた。また、以前はどこにでもあったペットボトルや食品袋、廃電器などの廃棄物や上流から流れ着いた流木も、姿を消していた。

後で分かったことだが、木の幹を切ること以外は、すべて桂さんが一人でこの2カ月ほどの間に一生懸命働いて成し遂げた成果だった。それだけでなく、庭師が切った枝の幹を桂さんは集め、柵として自分の「別荘」の周りに固定していた。

そして、自分のテントの前に、私や他の友達が遊びに来たときに使える応接用の小屋を建ててあった。中で休憩したり、おしゃべりをしたり、コーヒーを飲んだりすることができる。

これは私が今まで見た中で最も小さく、粗末な応接間であるが、中に入って小さい椅子に座ると落ち着いて心地がいい。

荒川河川敷のホームレス

桂さんは家の周りをきれいに片付け、「小さな応接間」を建てた

交通事故に遭って、この世に別れを告げたかと思った

斉藤さんの「アパート」を通って、桂さんの「別荘」に行った。

彼らの自転車が入り口に止まっているのを見て、まずはほっとした。2人は無事であるだけでなく、今も家の中にいるようだ。

私は叫んだ。「桂さん!」

「誰だ?」テントの部屋から、桂さんのよく知った声が聞こえてきた。

SDGs
使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが「竹建築」の可能性に挑む理由
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

全国コアCPI、3月は+3.2%に加速 食料品がさ

ワールド

フロリダの大学で銃撃、2人死亡 容疑者は保安官代理

ワールド

ウクライナ鉱物資源協定、24日にも署名 トランプ米

ビジネス

ネットフリックス、第2四半期見通し強気 広告付きサ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判もなく中米の監禁センターに送られ、間違いとわかっても帰還は望めない
  • 3
    米経済への悪影響も大きい「トランプ関税」...なぜ、アメリカ国内では批判が盛り上がらないのか?
  • 4
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 5
    紅茶をこよなく愛するイギリス人の僕がティーバッグ…
  • 6
    ノーベル賞作家のハン・ガン氏が3回読んだ美学者の…
  • 7
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 8
    トランプ関税 90日後の世界──不透明な中でも見えてき…
  • 9
    関税を擁護していたくせに...トランプの太鼓持ち・米…
  • 10
    金沢の「尹奉吉記念館」問題を考える
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止するための戦い...膨れ上がった「腐敗」の実態
  • 3
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 6
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 7
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 8
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 9
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 10
    「世界で最も嫌われている国」ランキングを発表...日…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中