突然姿を消した荒川ホームレスの男性 何が起こったのか、残された「兄弟」は...
「趙です。お久しぶりです!」
桂さんは笑みを浮かべて家のドアから顔を出して、間髪入れずにこう言った。
「斉藤さんが行方不明になった」
私は驚いた。
「そこに置いてあるのは斉藤さんの自転車ではないんですか?」
「それは斉藤さんのものではありません。彼は今年1月17日の夕方、自分の自転車で出かけてから、帰ってきていません。交通事故に遭って、もうこの世に別れを告げたのではないかと思いました」と、桂さんは言う。
「その後はどうなりました?」私は待ちきれずに桂さんに尋ねた。
「後で話を聞くと、彼は施設に入ったようです。たまに荒川河川敷に来る、施設の職員に聞きました。その人の話では、この前、確かに斉藤さんらしき人が施設に入ってきた、とのことでした。幸い、彼は生きているようです」
続けて桂さんは言った。
「しかし、斉藤さんは施設に行ったのに、なぜ事前に声をかけてくれなかったのかが分からない。私はその施設の人に、斉藤さんへの伝言を頼んだんです。自転車で帰ってきて、自分が残したものを整理してもらいたい。捨てるべきものは捨てて、捨てないものは施設に持っていってほしいと。でも、今日でもう2カ月以上経ちますが、斉藤さんの姿は全然見えません」
なぜ斉藤さんは急に姿を消したのか
斉藤さんの突然の行動に、桂さんは不満を持っていた。しかし一日中、斉藤さんが残した品物を整理し、分かりやすい所に置いて、斉藤さんが帰って来るのを待っていた。