最新記事
中国社会

監視社会も影響か、無差別殺傷事件が頻発する中国...景気減速で広がる「メンタルヘルス問題」

2024年11月20日(水)17時27分
広東省珠海市の事件現場に線香を供える人々

11月19日、 中国では一般市民を標的にした無差別の殺傷事件が1週間あまりで3件も発生した。写真は12日、広東省珠海市の事件現場に線香を供える人々(2024年 ロイター/Tingshu Wang)

中国では一般市民を標的にした無差別の殺傷事件が1週間あまりで3件も発生した。こうした事件が頻発する背景には経済の減速と、それに関連したメンタルヘルス(心の健康)問題があると専門家は指摘している。

今月11日には広東省珠海市で男が車を暴走させて35人が死亡した。容疑者は離婚調停に不満を抱えていたとされる。16日には江蘇省無錫市の専門学校で元学生が8人を殺傷。さらに19日には湖南省常徳市の小学校前で複数の児童や歩行者が車にはねられ負傷した。この事件については容疑者が意図的に事故を起こしたのかなどを警察が捜査している。


 

無差別殺傷事件は今年に入って非常に高い頻度で起きており、中国の社会的な健康状態に対する懸念が高まっている。

警察の発表によると、珠海市と無錫市の事件の容疑者はいずれも経済的に痛手を被り、その怒りを無関係の市民に対して爆発させたと見られる。中国は景気が減速して雇用機会が一段と不安定になり、奇跡的な経済発展から恩恵を受ける人も減っている。このような経済的圧迫が精神的健康に与える影響は増大していると専門家は指摘する。

オックスフォード大学中国センターのアソシエイトで中国に関する著作もあるジョージ・マグナス氏は中国で無差別殺傷事件が相次いでいることにについて、「異常行動ではなく、ある種のパターンを示している」と分析。戦略国際問題研究所(CSIS)が7月に示した、中国では成功できないのは不公平や制度的要因のせいだと広く認識されているとの調査結果に触れ、「こうした事件に見られる社会的および産業的な停滞感を説明する上で、この調査の知見は大いに役立つし、社会の現状について警鐘を鳴らしている」と述べた。

ビジネス
栄養価の高い「どじょう」を休耕田で養殖し、来たるべき日本の食糧危機に立ち向かう
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=続伸、ダウ312ドル高 スマホなど関

ワールド

米財務長官、中国との貿易協定に期待 関税は「冗談で

ワールド

米政権、今秋に次期FRB議長候補者の面接を開始=財

ビジネス

NY外為市場=ドル、対ユーロで3年ぶり安値近辺 対
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトランプ関税ではなく、習近平の「失策」
  • 3
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができているのは「米国でなく中国」である理由
  • 4
    「世界で最も嫌われている国」ランキングを発表...日…
  • 5
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 6
    シャーロット王女と「親友」の絶妙な距離感が話題に.…
  • 7
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 8
    NASAが監視する直径150メートル超えの「潜在的に危険…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    米ステルス戦闘機とロシア軍用機2機が「超近接飛行」…
  • 1
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 2
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 3
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止するための戦い...膨れ上がった「腐敗」の実態
  • 4
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 5
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 6
    「ただ愛する男性と一緒にいたいだけ!」77歳になっ…
  • 7
    投資の神様ウォーレン・バフェットが世界株安に勝っ…
  • 8
    「吐きそうになった...」高速列車で前席のカップルが…
  • 9
    コメ不足なのに「減反」をやめようとしない理由...政治…
  • 10
    まもなく日本を襲う「身寄りのない高齢者」の爆発的…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 7
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中