最新記事
中国社会

監視社会も影響か、無差別殺傷事件が頻発する中国...景気減速で広がる「メンタルヘルス問題」

2024年11月20日(水)17時27分

メンタルヘルスを手掛ける非営利団体「キャンドルX」のディレクターで心理療法士のシャオジェ・チン氏によると、社会的な不公平感や格差の蔓延(まんえん)が、極端な場合には無差別な暴力へとつながる可能性がある。「社会的・経済的に取り残され、脇に追いやられた人々は公平に扱われていないと感じることがある。そして感情をうまくコントロールできない人は、時に暴力的な形で感情を爆発させることがある。


 

監視社会も影響か

公式統計によると、中国は暴力犯罪の発生率が世界平均よりもはるかに低い。しかし最近の無差別殺傷事件頻発で公共の安全性を巡る懸念が高まり、これまで暴力のない安全な街を誇りにしてきた市民は衝撃を受けている。

殺傷事件に関する話題が広範囲にわたって検閲を受けていることも不安が広まる要因になっており、公式発表の信ぴょう性を疑う声が大きくなっていると、専門家は指摘している。

シンガポールのS・ラジャラトナム国際問題研究院の上級研究員、ドリュー・トンプソン氏は「こうした検閲は、特に今年のように無差別で大規模な暴力事件が続く場合、国内の社会的な恐怖や政府への不信感を助長しかねない」と述べた。

復旦大学のチュー・ウェイグオ教授は最近発生した「社会に対する無差別的な報復」事件には共通点があると指摘する。加害者が不利な立場に置かれた人々で、多くは精神的な問題を抱え、不公平な扱いを受けて他に声を上げる方法がないと感じていたことだ。

チュー氏はソーシャルメディアに、カウンセリング支援が問題を緩和する可能性はあるが、個人の権利保護がより充実すれば不満を抱える人々の救いとなるかもしれないとする小論を投稿したが、すぐに検閲の対象となった。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国万科、債権者が社債償還延期を拒否 デフォルトリ

ワールド

トランプ氏、経済政策が中間選挙勝利につながるか確信

ビジネス

雇用統計やCPIに注目、年末控えボラティリティー上

ワールド

米ブラウン大学で銃撃、2人死亡・9人負傷 容疑者逃
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 5
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 6
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ…
  • 7
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 8
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 9
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 10
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中