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荒川河畔の「原住民」⑩

「暴力を振るわれることもある」...「兄貴」が語ったホームレス福祉の現状とは?

2024年11月6日(水)18時55分
文・写真:趙海成

私は彼を「お兄さん」(兄貴)と呼んだが、私より年上だろうと判断してそうしたわけだ。後で分かったことだが、実は彼は私より1つ年下だった。そうは言っても、この連載では彼を「兄貴」と呼び続けることにしよう。

これが「兄貴」という呼び名の由来である。

荒川河川敷のホームレス

兄貴と出会った場所、鉄道橋のそばの川沿い

ホームレスが施設に行きたくなかったらどうするか

兄貴は私に、ホームレスに関する多くの情報をもたらしてくれた。例えば、東京都北区役所や国土交通省がホームレス福祉に何億円も使っているとか、現在、福祉施設に入居しているホームレスは路上生活のホームレスよりずっと少ないといった話だ。

ホームレス本人が施設に行きたくなかったらどうするのか、と兄貴に聞いた。

斉藤さんも桂さんも、今は施設に入りたくないと言っていたのを思い出したからだ。

斉藤さんは、自分が施設に行ったら、桂さん一人をここに残すことになって心配だと言った。桂さんは、今はスマートな生き方をしていて、福祉施設に入ることを全く考えていないと言った。施設に入っても、そこでの集団生活に慣れず、ホームレスの生活に戻った人もいるのだという。

兄貴はこう説明してくれた。福祉施設に行きたくない人や施設に入っても出てしまう人は確かにいるが、政府はこのような人に対しては何もできず、彼らが望む生活を続けるのを放任するしかない。

ただし、全体として言えば、福祉施設に入居したいホームレスは多く、むしろ施設のベッドが足りない状態だという。

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