最新記事
荒川河畔の「原住民」⑩

「暴力を振るわれることもある」...「兄貴」が語ったホームレス福祉の現状とは?

2024年11月6日(水)18時55分
文・写真:趙海成
荒川河川敷のホームレス

私の質問に「兄貴」(左)は1つ1つ答えてくれた

<福祉施設に協力してホームレスたちの生活・健康調査を行ったり、孤独死した老人のアパートの片づけをしたりしている謎の男性に、在日中国人ジャーナリストの趙海成氏が出会った。連載ルポ第10話>


※ルポ第9話:冬の寒さ、夏の暑さ、亡くなる時、欲求不満解消...ホームレス生活のリアリティー より続く


今回からの主人公は「兄貴」になる。まず、彼と知り合ったきっかけと最初に話し合ったことを語りたい。

2年前のある日、私は息子を連れて荒川河畔に遊びに行った。そして私たちは鉄道橋のそばの河川敷で、椅子に座っている老人に出会った。彼は景色を眺めていたのだと思う。

私は彼に挨拶し、こう尋ねた。

「ここにお住まいですか」

「以前はここに住んでいましたが、8年前に赤羽駅のそばのアパートに引っ越しました。でも道具を入れたテントはまだここにあります」と、彼は微笑みながら答えてくれた。

「普段、お兄さんは何をなさっているんですか」と私は続けて聞いた。

「私は今、区役所所属の施設に協力して、定期的にこの辺りに住んでいる人たち(ホームレスのこと)を訪ねて彼らの健康状態を調べ、施設に報告しています。体調が悪化し、生活が自立できない人たちを福祉施設に送ることが目的です。施設の費用は国が負担します。私はこれまでに10数人のホームレスを手伝って引っ越させました。今ここに残っている5人(桂さんと斉藤さん〔共に仮名〕を含む)は後から引っ越してきたので、まだ施設に入るつもりはないみたいですね」

この自己紹介を聞いて、私はすぐにこの「兄貴」に興味を持った。そして、彼の平凡とは程遠い人生経験とホームレスに関する話を聞かせてもらうことになった。

自動車
DEFENDERの日本縦断旅がついに最終章! 本土最南端へ──歴史と絶景が織りなす5日間
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ミャンマー地震の死者1000人超に、タイの崩壊ビル

ビジネス

中国・EUの通商トップが会談、公平な競争条件を協議

ワールド

焦点:大混乱に陥る米国の漁業、トランプ政権が割当量

ワールド

トランプ氏、相互関税巡り交渉用意 医薬品への関税も
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジェールからも追放される中国人
  • 3
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中国・河南省で見つかった「異常な」埋葬文化
  • 4
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 5
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 6
    なぜANAは、手荷物カウンターの待ち時間を最大50分か…
  • 7
    不屈のウクライナ、失ったクルスクの代わりにベルゴ…
  • 8
    アルコール依存症を克服して「人生がカラフルなこと…
  • 9
    最古の記録が大幅更新? アルファベットの起源に驚…
  • 10
    最悪失明...目の健康を脅かす「2型糖尿病」が若い世…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えない「よい炭水化物」とは?
  • 4
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 5
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 7
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 8
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 9
    大谷登場でざわつく報道陣...山本由伸の会見で大谷翔…
  • 10
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中