どちらが勝っても日本に「逆風」か...トランプvsハリス、日本経済にとって「まだマシ」なのは?

SHIFTING AMERICAN WINDS

2024年11月1日(金)14時29分
加谷珪一(経済評論家)

カマラ・ハリス

ハリスの「機会の経済」で短期的には景気は足踏みするかもしれない CHIP SOMODEVILLA/GETTY MAGES

仮に中国からの輸入に対して60%、日本など友好国からの輸入に対して10%の関税を課した場合、アメリカの輸入物価は確実に上昇する。そうなると、せっかく沈静化の兆しが見えてきたアメリカ経済が再びインフレに悩まされることになるかもしれない。

もっとも、中国からの輸入にさらに高関税をかければ、直接的な輸入が減少することは目に見えている。一方で、同国からの輸入については、関税を回避するため第三国を経由したものが増えるだけであり、実態は大きく変わらないとの見方もある。


実際、アメリカの隣国であるメキシコでは中国企業が相次いで現地法人を設立しており、迂回輸出の準備を進めている。

だが、友好国からの輸入にも関税をかけるとなると、60%の関税は回避できたとしても10%の関税は残ってしまうので、やはり物価には上昇圧力が加わる。

もう1つの目玉政策である移民政策についても、経済的に見れば確実にインフレ要因といえるだろう。アメリカの低賃金労働は、厳密には違法であるものの、既に社会に定着している移民によって成り立っている部分が大きい。

移民の強制退去を進めた場合、低賃金労働に従事する人が減るので、企業は相応の賃上げを余儀なくされる。そうなれば物価上昇にさらに拍車がかかる。

ビジネス支援
地域経済やコミュニティを活性化させる「街のお店」...その支援が生み出す、大きな効果とは?
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米雇用、10月予想大きく下回る+1.2万人 失業率

ワールド

ロ朝外相が会談、崔氏「勝利の日までロシアを支援」

ビジネス

米シェブロン、第3四半期利益が予想を上回る 生産増

ワールド

米国、レバノンにイスラエルとの一方的停戦宣言を要請
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:米大統領選と日本経済
特集:米大統領選と日本経済
2024年11月 5日/2024年11月12日号(10/29発売)

トランプ vs ハリスの結果次第で日本の金利・為替・景気はここまで変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本で「粉飾倒産」する企業が増えている理由...今後はさらなる「倒産増加」が予想される
  • 2
    「まるで睾丸」ケイト・ベッキンセールのコルセットドレスにネット震撼...「破裂しそう」と話題に
  • 3
    幻のドレス再び? 「青と黒」「白と金」論争に終止符を打つ「本当の色」とは
  • 4
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 5
    脱北者約200人がウクライナ義勇軍に参加を希望 全員…
  • 6
    北朝鮮軍とロシア軍「悪夢のコラボ」の本当の目的は…
  • 7
    天文学者が肉眼で見たオーロラは失望の連続、カメラ…
  • 8
    中国が仕掛ける「沖縄と台湾をめぐる認知戦」流布さ…
  • 9
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 10
    「もう遅いなんてない」91歳トライアスロン・レジェ…
  • 1
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 2
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴出! 屈辱動画がウクライナで拡散中
  • 3
    キャンピングカーに住んで半年「月40万円の節約に」全長10メートルの生活の魅力を語る
  • 4
    幻のドレス再び? 「青と黒」「白と金」論争に終止符…
  • 5
    日本で「粉飾倒産」する企業が増えている理由...今後…
  • 6
    2027年で製造「禁止」に...蛍光灯がなくなったら一体…
  • 7
    【クイズ】次のうち、和製英語ではないものはどれ?…
  • 8
    世界がいよいよ「中国を見捨てる」?...デフレ習近平…
  • 9
    「決して真似しないで」...マッターホルン山頂「細す…
  • 10
    北朝鮮を頼って韓国を怒らせたプーチンの大誤算
  • 1
    ベッツが語る大谷翔平の素顔「ショウは普通の男」「自由がないのは気の毒」「野球は超人的」
  • 2
    「地球が作り得る最大のハリケーン」が間もなくフロリダ上陸、「避難しなければ死ぬ」レベル
  • 3
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶりに大接近、肉眼でも観測可能
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の…
  • 6
    大破した車の写真も...FPVドローンから逃げるロシア…
  • 7
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 8
    韓国著作権団体、ノーベル賞受賞の韓江に教科書掲載料…
  • 9
    エジプト「叫ぶ女性ミイラ」の謎解明...最新技術が明…
  • 10
    コストコの人気ケーキに驚きの発見...中に入っていた…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中