殺されたナスララの使命は「イスラエル壊滅」だった──代々のアラブ指導者の見果てぬ夢だ
THE MIDDLE EAST’S DEADLY DREAM PALACES
命果てる瞬間まで、ナスララはイスラエル軍の浸透能力を理解していなかった。おそらく彼は、長年にわたるイランの手厚い支援に酔い、現実が見えなくなっていたのだろう。いずれにしろ、イランの夢の宮殿は今やボロボロ。イスラエルとイランの新たな対決は、はるか昔から明らかだった事実を露呈している──イラン主導のシーア派帝国のビジョンは、ハリボテだ。
悲しいかな、他方でイスラエル人は、「完全勝利」という危険な夢の宮殿を自ら築き上げた。イスラエルの軍事的成果を地域の安定に生かす方法もあるだろうに、現政権は啓蒙的国家ビジョンを示すどころか、周辺国との妥協点すら探らずにあらゆる前線で戦うことばかりに夢中になっている。
ナスララ殺害とイスラエルのレバノン南部侵攻を受けて、あるレバノン人教授はレバノンの「あらゆる世代」が「政治に目覚め」ており、「イスラエルは将来の戦争の種をまいている」と警告した。そして、暴力の連鎖も果てしなく続いている。
シュロモ・ベンアミ
SHLOMO BEN-AMI
イスラエル元外相。世界各地の紛争解決を目指す「トレド国際平和センター」副所長。著書に『戦争の痕、平和の傷──イスラエルとアラブの悲劇』がある。
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