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荒川河畔の「原住民」⑦

東京に逃げ、ホームレスになった親子。母は時々デパートに行って「ある作品」を作っていた

2024年10月9日(水)17時50分
文・写真:趙海成

お母さんはコスト分だけをもらって売ったことがある。彼女は1個の小さな巾着袋を縫うのに約3時間以上かかる。小さな巾着袋1つの材料費は、500円ほどになるそうだ。

私はお母さんに言った。「はい! わかりました。お母さんの物語を書いて、友人など多くの人に読んでもらい、巾着袋を1000円で売り込みます」

お母さんは慌てて、「1000円で売るのは高すぎませんか?」と言った。

私は答えた。「材料費は500円で、それに3時間の手間賃を加えると、1000円は高くありませんよ。私は先に10個を購入して売ってみますから、今すぐに1万円を前払いしてもいいです」

お母さんは承諾して、「申し訳ありません」と言ってくれた。

荒川河川敷のホームレス

お母さんは自分で縫った小さな巾着袋を取り出し、木の板でできた机の上に並べた

お母さんの「愛の巾着袋」が次々に中国人に売れた

今回お母さんと再会して、私は彼女の波乱の人生経験についてもっと多くの理解を得た上に、お母さんの生活を支援し、将来の人生に希望を持たせられる道を見つけた。

喜ばしいことに、私が「モーメンツ(微信〔WeChat〕の情報共有機能)でお母さんの「愛の巾着袋」の「代理販売」を発表した初日に、10個の巾着袋はすべて、ある中国人の女性が買ってくれた。

その後、その女性は中国に帰省し、小さな巾着袋は向こうの親戚や友人にプレゼントしたという。彼女の後にも、もう1人の男性と2人の女性が私を通じて9つの小さな「愛の巾着袋」を買ってくれた。思いやりのある彼らに、心から感謝の意を表したい。

一方、お母さんと知り合ったことは、私の生活にまた心配事を増やすことにもなった。

特に台風が襲来した際に私が最も心配しているのは、お母さんを含む、荒川河川敷の森に住むホームレスの友人たちの安否だ。

日本の台風が多発する時期は、6月から9月の間である。被害を未然に防ぐために、私は昨年の秋からテントやキャンプ用のランタン、防寒下着などを含むアウトドア用品を次々と桂さんと斉藤さん(共に仮名)に贈った。

今年に入ってお母さんと再会した後も、雨の日用の長靴やキャンプ用のランタン、防寒用のカシミアソックスなど、防災グッズを贈った。

これらのものは、2023年5月末から6月頭にかけて台風2号が襲来したときに役に立った。

特に、私が中古店から1000円で手に入れた大きなテントは、桂さんと仲間たちが堤防で台風の最初の夜を無事にやり過ごすときに役目を果たした。それを聞いてとても嬉しかった。

しかし、私のしたことすべてが効果があったわけではない。

台風2号が襲ってきたあの日、お母さんの過酷な境遇に対して、悲しくも私は何も助けてあげることができなかった。

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