最新記事
旧ソ連圏

西側と中ロの狭間で迷えるジョージア...10月議会選は「戦争か平和か」を選ぶ、「最後のチャンス」に?

THE WEST IS LOSING ANOTHER COUNTRY

2024年10月3日(木)16時08分
マシュー・トステビン(本誌シニアエディター)

野党側は現政権に対する西側の措置を歓迎しているが、効果は疑問視している。「今やロシアとジョージアの夢のプロパガンダが社会に深く浸透しており、支持者にとって(西側からの)制裁は勇気の証しのようになっている」と、野党政治家のアレキサンドル・クレボーアサティアニは言う。「制裁はあまりに軽く、あまりに遅く感じられる」

反対派はジョージアの夢を親ロシアと呼ぶが、状況はもっと微妙だ。トビリシ市内で見られる反ロシアや親ウクライナの落書きは、ロシアに対する強い憎悪の証しでもある。


1801年にジョージアはロシア帝国に併合された。1917年のロシア革命後につかの間の独立を果たすも、ソビエト連邦の侵攻により数年で鎮圧された。独立を取り戻したのは91年のソ連崩壊後のことだ。

旧ソ連衛星国の多方向外交

2008年にロシアがジョージアに侵攻したのは、NATOがジョージアとウクライナがいずれ加盟するだろうと語った数カ月後だった。

ロシア軍は5日間の戦闘で、親ロシア派の飛び地である南オセチアでジョージア軍を撃退。その後、ロシアは南オセチアと、ジョージア北部の黒海沿岸のアブハジアを独立国家として承認した。これは、ウクライナではるかに大規模に展開されることになる事態の兆候だった。

ジョージアの夢は平和的な方法で領土保全を回復すると語っているが、ロシアが、占領している飛び地について友好的な政府のために手綱を緩めるそぶりを見せることはない。

そして、ジョージアはロシアだけを見ているわけではない。西側との意見の相違が深まるにつれて、中国とも関係を強めているのだ。

中国の「一帯一路」構想の一環として、中国の業者がジョージア周辺でインフラを建設していることは明白だ。黒海沿岸のアナクリアでは、アメリカが投資を引き揚げた後に中国の企業コンソーシアムが巨大な港の建設を受注した。

政治的な接近も見受けられる。中国外務省は、アメリカによる国外での政治干渉に関する最近の報告書の中で、ジョージアを一例として挙げている。ジョージアの夢の政治家たちはすかさず支持を表明した。

ジョージアはロシアの周辺に位置する他の国々にとって、ある面では親西側だが、別の面では親ロシアまたは親中国という手本になりつつあると、ワシントンのシンクタンク、米国平和研究所のドナルド・N・ジェンセンは言う。

「ジョージアは、ロシアに完全に服従するわけではないが、同時にいくつかのベクトルを見据える多方向の外交政策というグレーゾーンに落ち着く可能性がある。(旧ソ連圏の)多くの国がその方向を目指そうとしているかもしれない」

20250121issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年1月21日号(1月15日発売)は「トランプ新政権ガイド」特集。1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響を読む


※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

韓国尹大統領に逮捕状発付、現職初 支持者らが裁判所

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 8
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 9
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 10
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中