最新記事
イスラエル

プーチンと並び立つ「悪」ネタニヤフは、「除け者国家」イスラエルを国連演説で救えるか

Benjamin Netanyahu Set For Another U.N. Showdown

2024年9月26日(木)18時15分
マイケル・キャロル
国連総会で演説するネタニヤフ

第78回国連総会で演説するネタニヤフ(2023年9月22日、ニューヨーク)REUTERS/Brendan McDermid

<演説で国内外の世論を動かすのが得意なネタニヤフだが、ガザ侵攻とレバノン攻撃で容赦なく民間人の命を奪い、ICCが戦争犯罪の疑いで逮捕状を請求している今回、それでもスタンディングオベーションを期待できるのか>

国連総会での演説に意欲を燃やすイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、イスラエル国防軍(IDF)が北隣のレバノンに2006年の侵攻以来で最も激しい攻撃を始めたため、訪米スケジュールを繰り延べざるを得なかった。

それでもニューヨーク行きを断念する選択肢は眼中にないらしい。ネタニヤフとパレスチナ自治政府のマフムード・アッバス議長は予定どおり現地時間の9月26日に国連総会で一般討論演説を行うことになりそうだ。

ネタニヤフはちょうど1年前、国連総会の演説で「新しい中東」の幕開けは近いと語り、独自の和平構想を得意げに披露した。しかし、再びその檜舞台に立とうという今、1年前には想像もつかなかったほど中東情勢は悪化している。

イスラエル軍がガザ侵攻を開始してからもうすぐ1年の節目を迎えるが、停戦の見通しは全く立っていない。一方でイスラエルは、イランの後ろ盾を得たレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラにも猛攻を加え、広範な地域紛争が今にも火を噴きかねない状況になっている。

ネタニヤフは憎悪と分断を煽って政権を維持してきた。敵の「殲滅」を目指すその好戦的な姿勢は、国際社会でイスラエルの孤立を招き、国内外で激しい批判にさらされている。

国際刑事裁判所(ICC)の主任検察官は、戦争犯罪の疑いでネタニヤフの逮捕状を請求している。逮捕状が発布されれば、ネタニヤフはロシアのウラジーミル・プーチン大統領やスーダンのオマル・アル・バシル前大統領と同様、ICCに逮捕される身となり、国外への移動を制限されることになる。

アナログ式のプレゼン手法

「ネタニヤフは今回の国連総会では、ペルソナ・ノン・グラータ(「招かれざる客」を意味する外交用語)扱いされることになる」と、元イスラエル外務省高官で、ネタニヤフ批判派のアロン・リエルは言う。

ネタニヤフは演説巧者で鳴らす。国際舞台で拍手喝采を浴びたおかげで、国内でも見直され、支持率を上げたことがこれまでにも何度かあり、この手法に味を占めてきた。

今年7月には米連邦議会の上下両院合同会議で演説し、スタンディングオベーションを受けた。イスラエル国内では批判も聞かれたが、本人は得意満面だ。

「ネタニヤフは国連での演説などを強みとしている」と、ジョージタウン大学とテルアビブ大学の国際関係学の教授であるヨシ・シェインは言う。「国外で演説をするときはたいがい、国際社会だけでなく、国内世論受けも狙って、原稿を練りに練る」

過去の国連演説では、ネタニヤフは劇的な効果を狙って、「ここぞ」という時に図を見せ、聴衆を沸かせて、メディアに大きく取り上げられてきた。2012年にはイランの核開発の危険性を爆弾にたとえた分かりやすい図を見せ、2009年にはナチスのホロコースト(ユダヤ人大虐殺)計画を記した書類のコピーを提示し、「ホロコーストはなかった」と主張する反ユダヤ主義をやり込めた。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

原油先物続伸、ウクライナ紛争激化で需給逼迫を意識

ビジネス

午前の日経平均は反発、ハイテク株に買い戻し 一時4

ワールド

米下院に政府効率化小委設置、共和党強硬派グリーン氏

ワールド

スターリンク補助金復活、可能性乏しい=FCC次期委
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 8
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中