年収600万円、消費者金融の仕事は悪くなかったが、債務者が「衝撃の結末」を迎えることも...
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<消費者金融の中の人たちは、何を考え、金を貸し、返済を迫っているのか。1990年代半ばから20年間、業界にいた人物が内情を明かす>
『消費者金融ずるずる日記』(加原井末路・著、三五館シンシャ)の著者は1990年代の半ば、30歳のとき消費者金融の世界に足を踏み入れ、50歳で退職するまで「お金にまつわる悲喜こもごも」を目撃してきたという人物だ。
私はこの仕事で家族3人を養ってきた。それにこの仕事の条件は悪くない。土日祝日は基本的に休みだし、残業手当もしっかりと出る。たまに休日出勤をすれば、割のいい休日出勤手当もきちんと出る。ボーナスを含めて年収600万円ちょい。無事に住宅ローンも組むことができた。
プラス面の一方、それと同様、いやそれ以上のマイナス面も覚悟しなければならない。そもそも世の中のイメージは「消費者金融=悪」だ。ドラマや映画では、貧乏人を食い物にする高利貸しとして描かれる。(「まえがき――「旦那さんのお仕事は?」より)
実際のところ職場は、日常的にあちこちから男性社員たちの怒号が聞こえてくるような環境であったようだ。なんとなく想像がつくが、それもある意味では仕方がないのかもしれない。貸した相手がきちんと返してくれるならまだしも、のらりくらりと話を逸らしてごまかすような人のほうが圧倒的に多いからだ。
だいいち本書を読む限り、著者は根っからの悪人ではなく、数々の戸惑いや良心の呵責を経てきた人物である。そういう人でさえ、必要に応じて「悪人」を演じなくてはならないということだ。
30代の落合さんは50万円を借りて半年、最初の数カ月は返済していたが、もう2カ月間、返済が滞っている。前回の電話では「明後日払う」と言ったが、実行されていない。電話すると、「すんません。明後日払いますから」と言う。
「明後日払うったってさ、この前も同じこと言ったよね。あんた、給料日25日でしょ。明後日って給料前の20日でしょ。どうやって払うの?」(52ページより)
こんな調子なので、お金を貸して、返済してもらう側の口調も厳しくなってしまう。もちろんそれはいいことではないだろうけれども、なにしろ相手が相手なのだ。
借金慣れした年配の債務者が「無敵の人」に
最初の貸付業務の際は「お客さま」として接し、滞納についても初月の遅れまでは敬語で話すのが基本だという。
ところが、「来月には払う」と約束したにもかかわらず、そののち連絡もないまま反故にされたり、電話のたびに延々と言い訳を聞かされたりしているうちにタメグチになってしまうということである。
また、嘘をつかれたり、大声でわめいたりされれば、堪忍袋の緒が切れて罵倒に進化したりもするだろう。そんなことが日々繰り返されるのであれば、無理もないと思わされる。