年収600万円、消費者金融の仕事は悪くなかったが、債務者が「衝撃の結末」を迎えることも...
「とんでも債務者」は年配者に多い。人は歳を重ねるごとに図々しくなっていくらしく、借金慣れした年配債務者の中には「借金が周りにバレようが、集金に来られようがどうってことない」という"無敵の人"に仕上がっている人がいる。(115ページより)
一方、若い債務者にはまじめに返済し、約束を守る人が多いようだ。しかしそんななか、社会人2年目で24歳の伊東さんは2カ月の滞納者だったという。他社も含めて総額150万円の借金を抱えていたため、あるとき著者は本気で追い込みをかけようと電話することになる。
ちなみに何年も電話で催促をしていると、口先だけか、心からの言葉なのかのニュアンスは分かってくるようになるそうだ。そして、「すみません、なんとかします」と懸命に謝り続ける伊東さんの口ぶりは、明らかに後者だったという。
どうしてもお金が必要だったため、最初はアコムから借り、最初に入社した会社でがんばろうと思っていたものの、労働環境が厳しく体調を崩すことに。仕事が続けられなくなり、やむなく退職した。電話口で伊東さんはそんな事情を明かした。
時折、グスッグスッと鼻水をすする音が聞こえてくる。泣いているようだ。
「生活していくだけなら、アルバイトでなんとか切り詰めてやっていけたんですが、大学のときに借りた奨学金の返済があったもので......。それでまずアコムさんに借りに行ったんです」(116〜117ページより)
「必ずきっちりと返済します」...その1カ月後
銀行で借りようにも審査は通りにくく時間がかかる。奨学金と家賃の支払いが迫っていたため、まずはアコムから借りて糊口をしのぐも、正社員の仕事が見つからず、著者の会社をはじめとする別の消費者金融からも借りてしまうことに......。
多重債務に陥る人の典型的なパターンだそうだが、気の毒なのはその原因が奨学金だったということだ。
そのため著者も心を動かされるが、しかし債務者の個人的な理由に振り回されるわけにはいかない。ドライさが求められる立場なので、「今回だけは特別に待つけど、ちゃんと返してもらわなければいけないんだから、そのことは覚えておいてね」と告げる。
「はい、もちろんです。ご迷惑をかけないように、必ずきっちりと返済します。それはお約束します」
これ以上、追及はできないと悟った私は電話を切った。伊東さんの境遇に思いを馳せ、ため息をつく。(118ページより)
ところがこの話は、悲しい結末を迎える。あるとき部署に届いた1通の封筒を開けたとき、著者は衝撃を受けることになった。
それは死亡診断書だった。