大詰め自民党総裁選、声の専門家が読み解く「最有力候補」の本音と実力
The Secret of Voice
小泉進次郎(元環境相)
少々ズレたことを言っても人気があるのは、力強く張りのある声の力も大きいだろう。声帯から発せられる喉頭原音はあまり低くはなく小林鷹之・前経済安全保障相とほぼ同じ高さだが、聴き手には小泉氏の声のほうが低く聞こえるはずだ。
小泉氏が声を張る際には、喉頭が上がり声門閉鎖が強く圧のある声となる。ある特定の位置で高い周波数の倍音が強く生じるが、長く持続させることはなく、すぐに喉頭を下げて広い空間で声に低い響きを加えている。つまり、明るく高い音と低い響きが同居している。
聞くところによると中高は野球部だったとか。音が拡散してしまう野外で喉を傷めずに大声を出し続けるためには、効率的で強い共鳴が必要となる。小泉氏もそのようなスポーツマンが自然に体得する発声法だが、語尾で最も低い音域まで落とすテクニックは、かなり自分の声を意識的に使い、鍛えてきた証しだろう。
演説中でも人の話を聞いているときにも無駄なまばたきがなく、常に相手の目をしっかりと見る彼は、政治を人々の期待に応える劇場と捉えているのかもしれない。一方で焦りがすぐに声に出るあたりは、あまり嘘をつけない正直な人柄のようである。
また、構音(発音)の際に軟口蓋があまり動かない硬さを感じることがある。音声としては少し鼻に響いたように聴き取れる音だ。これはこだわりの強さや、何かを抑えていることを示している。政治劇場を降りた場面ではおそらく全く別の人格があって、実はそちらが彼の望む生き方なのかもしれない。