最新記事
越境攻撃

越境攻撃に不意を突かれたプーチン、「俺は騙された」と激怒、犯人探しが始まった

Putin Seeking to Find Out 'How and Why He Was Deceived' over Kursk: ISW

2024年8月15日(木)18時22分
イザベル・バンブルーゲン
軍幹部や地方幹部と会議をするプーチン

ウクライナ軍の侵攻を受けて、軍幹部や地方幹部と会議をするプーチン(8月14日、モスクワ郊外)REUTERS/Viacheslav Ratynskyi

<国境周辺にウクライナ軍が集結しているという情報がありながら、現地の治安部隊は何もしなかった。プーチンは側近を「監視役」としてクルスクに派遣したが、この部隊を立て直せるのか>

ロシア西部のクルスク州でウクライナ軍の進撃が続く中、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は側近のアレクセイ・デュミンに自軍の防衛体制を監視するよう命じたと報道されている。

【写真】ロシア側がパニックに陥っている証拠? 境界線に設置された「竜の歯」

これについて米シンクタンクは、ウクライナの越境攻撃を防げなかった軍と国防省の上層部の責任を追及し、処分する狙いがありそうだと指摘している。

シンクタンク・戦争研究所(ISW)の分析によれば、プーチンはウクライナ軍の戦術と意図を知らされなかったことについて、「どういう経緯で、なぜ、自分は騙されたのか」突き止めようとしているという。

ISWによれば、ロシアの軍事ブロガーの間では、監視役のデュミンは「複数のロシア高官と指揮官の運命を決める」ことになるとの「憶測」が飛び交っている。

ISWの分析は、クルスク州選出のロシア下院議員ニコライ・イワノフの発言を受けて発表された。同議員は8月13日、ロシアのテレビ局RTViの取材に応じ、独自ルートで確認した情報として、プーチンの警護官を務めたこともあるデュミンが、クルスクにおける「対テロ作戦遂行の監視を命じられた」と述べた。

上層部のクビのすげ替えも

「目下の急務はクルスク地域に侵入したウクライナ軍を駆逐することだ」と、イワノフ議員はRTViに語った。8月6日に始まったウクライナ軍の越境攻撃は、プーチン政権にとっては寝耳に水の奇襲だったとみられる。

プーチン政権はデュミンの起用を公式には認めていない。本誌はロシア国防省にメールで確認中だ。

デュミンは警護官時代にプーチンをクマの襲撃から守った人物で、クレムリンの要職を歴任し、プーチンの後継者とも目されている。IWSによれば、そのデュミンが監視役に起用されたことから、プーチンは軍や国防相のトップに失望したのだろうと、ロシアの軍事ブロガーや政治コメンテーターは憶測しているという。

近々軍事・政治部門の上層部の大幅なクビのすげ替えがあるはずだとも噂されているらしい。

ISWによれば、この1週間、治安部隊がモスクワの介入なしにはまったく事態を収拾できなかったことから、デュミンとその他の「プーチンの男たち」がクルスクを完全にコントロール下に置くのだろうというのが、クレムリンにコネがある軍事ブロガーらの見立てだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米国務長官、4月2─4日にブリュッセル訪問 NAT

ワールド

トランプ氏「フーシ派攻撃継続」、航行の脅威でなくな

ワールド

日中韓、米関税への共同対応で合意 中国国営メディア

ワールド

米を不公平に扱った国、関税を予期すべき=ホワイトハ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 9
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中