トランプの「思い込み」外交で崩れゆくアメリカの優位性...失われる建国以来の「強さの源」とは?
TRUMP 2.0 WOULD BE A DISASTER
共和党のタカ派は、核実験禁止条約から脱退して核実験を再開することも強く求めているが、これは中国が新たな核兵器を開発してアメリカと肩を並べようとする取り組みを後押しすることになる。
ヨーロッパに関しては、自分なら24時間以内にロシアとウクライナの戦争を終わらせることができるというトランプの主張は、いかに現地の状況を理解していないかを物語っている。
ウクライナの支援を継続して持続可能な外交的解決を強く推し進めることと、単にウクライナを見捨てることは、天と地ほどの差がある。
同様に、ヨーロッパの同盟国と新たな役割分担を慎重に交渉して実行に移すことと、拙速な撤退や、より多くの支出を迫る威圧的で辛辣な手法は大きく違う。
そして、バイデンの中東政策は大失敗だが、トランプの1期目も基本的に同じような政策で、同じように効果はなかった。
イスラエルが望むものを何でも与え、パレスチナ問題を無視しても犠牲はないと考え、地域の重要な敵対国との対話を拒否する一方で、注文の多い依存国家との「特別な関係」の追求を重視した。
トランプは2015年の核合意から離脱してイランに「最大限の圧力」をかけ、地域の緊張をあおり、イランを核保有に向けて大きく前進させた。アメリカの中東政策は何十年も失敗を重ねてきたが、トランプがホワイトハウスに戻っても、今より良くなることはないだろう。
「強い大統領」を目指す弊害
ほかにもトランプと共和党は、長期的にアメリカを弱体化させる政策を採用する可能性が高い。彼らは移民受け入れの壁を引き上げ、数百万人を国外に追放するつもりだ。その多くが現在は有給で雇用され、アメリカの長期的な成長見通しに貢献している事実を無視している。
中国や日本、韓国、ドイツなど大半の強国と違って、アメリカの人口は今後100年にわたり増え続ける見込みだ。労働人口が若く、年齢に伴う退職者が少ないという優位性を維持できるかどうかは、移民の受け入れに懸かっているのだ。
オラクル、アップル、テスラ、アマゾンをはじめ、数え切れないほど多くの成功した企業の創業者を見て分かるとおり、才能ある移民を引き付けてその子孫の忠誠心を獲得できることは、アメリカの建国以来の強さの源だ。トランプとバンスはそれを切り捨てようとしている。