最新記事
ファクトチェック

拡散中のハリス副大統領「ぎこちないスピーチ映像」がフェイクと言い切れるこれだけの理由【ファクトチェック】

Fact Check: Kamala Harris Deep Fake Spreads After Biden Drops Out

2024年7月25日(木)10時23分
トム・ノートン
演説するカマラ・ハリス副大統領

lev radin-shutterstock

<バイデン大統領が大統領選からの撤退を発表した翌日、ハリス副大統領がたどたどしい演説をする動画がSNSで拡散されたが、AIを使ったフェイク動画であると判明した。背景、元動画、手法を紹介する>

ジョー・バイデン米大統領が、2024年大統領選挙からの撤退を突然決めたことで、バイデンから民主党候補に推薦されたカマラ・ハリス副大統領をめぐる新たな誤情報が拡散された。

【動画】ぎこちないスピーチ...拡散されたハリス米副大統領のフェイク動画

バイデンは現地時間7月21日、大統領選からの撤退を発表。6月末に行われたトランプ前大統領との討論会を受けて、年齢や大統領としての適性をめぐる懸念が拡大し、撤退を求める圧力に直面していた中での決断だった。

81歳のバイデンは、ソーシャルメディア上に発表したメッセージの中でハリスを支持し、民主党員たちに対して「今こそ団結してトランプを打ち負かす時だ」と呼びかけた。

共和党が民主党に対する攻撃ラインを再編成する中で、ある動画クリップがソーシャルメディアで注目を集め始めた。ハリスがたどたどしく、ぎこちないスピーチをする動画だ。

X(旧ツイッター)ユーザーのCherylWroteItが7月22日に投稿した動画の中でハリスはこう述べている。

「今日は今日で、昨日は昨日の今日です。明日は明日の今日になります。だから今日を生きましょう。未来の今日が過去の今日と同じになるように、明日と同じであるように(Today is today, and yesterday is today yesterday. Tomorrow will be today tomorrow, so live today so the future today will be as the past today, as it is tomorrow.)」

同ユーザーは「私たちが、別世界に生きているに違いない。この女性が薬物リハビリ施設か精神療養施設に入らずに済み、それどころか大統領選の指名候補の本命として推薦されるなんて、それ以外に説明がつかない」と投稿。

「正直なところ...こんな人物に投票しよう、と本気で検討できてしまう人たちはどうかしている」と綴り、「社会はそれほど堕落していないし、最低限の常識くらいは失っていないはずだ」と続けた。

その言動が気取っているとして、ハリスはこれまでにもからかわれてきた。バイデンが大統領選から撤退し、ハリスを後継候補に指名したと報じられると、保守系メディアはハリスが笑っている場面などのまとめ動画を作成し始めた。

今回の動画クリップの元ネタとなったのは、ハリスが繰り返し使用し、またそのために嘲笑の的となってきた、次のようなフレーズだ。「前例から解き放たれて何を成し遂げられるかを、私は想像することができる(I can imagine what can be and be unburdened by what has been)」

Xにポストされた動画には、このおなじみのフレーズをアレンジしたような発言が含まれている。だが、この動画は本物ではない。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中