「地味な男」スターマーが勝った英国...14年ぶりの政権交代も目指すのは「地味な安定」?
Tony Blair Minus the Optimism
あれから20年。新型コロナのパンデミックを経て、暗い時代はさらに暗くなった。欧州でも中東でも戦争が続き、気候変動対策の目標は達成できず、ポピュリズムの言説がまかり通り、一部の国では政権を握った。
スターマーも、自身の動画や写真には必ず国旗を入れる。添えられる言葉は「変化」だが、意識下のメッセージは「安定」だ。
誰が彼を責められるだろう。スターマーに配られたカードは最悪だ。
ブレアは前任者ジョン・メージャーのおかげで健全な財政を引き継げたが、スターマーは低迷する経済、ナポレオン時代以来最小の軍隊、さび付いた医療制度、貿易を限りなく困難にするブレグジット後の通関手続きなどの障害を引き継がされた。
保守党の首相、とりわけボリス・ジョンソンとリズ・トラスは最悪で、テリーザ・メイとリシ・スナクも大差なかった。おかげでイギリスの評判は地に落ちた。
スターマーもブレアのような笑顔で勝負したいだろうが、それは無理。彼には国民を喜ばせることも、世界に向けて壮大な約束をすることもできない。
それでいいのだろう。なにしろ、今なお民主主義の本流に踏みとどまっている政治家はほとんどいない。期待値は低いから、今さら国民を失望させることもない。それが、せめてもの幸いか。