最新記事
財政

G7の巨額債務が懸念材料に...次の火種はどこか?

2024年7月18日(木)19時50分
イタリアで開かれた主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議

7月16日、金融市場では主要先進国の巨額債務が再び不安の種になりつつある。写真は5月、イタリアで開かれた主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議で集合写真に収まる参加者(2024年 ロイター/Massimo Pinca)

金融市場では主要先進国の巨額債務が再び不安の種になりつつある。選挙の年で財政見通しが悪化していることが背景だ。

フランスでは予想外の解散総選挙と大規模な歳出計画を受けて国債市場に警戒感が広がっている。米国でも11月の大統領選を控え債務動向に関心が集まる。

債務危機の発生は基本シナリオではないが、投資家は財政が緩み市場を圧迫するリスクを警戒している。

チューリッヒ保険グループのチーフ・マーケット・ストラテジスト、ガイ・ミラー氏は「財政赤字に再び注目が集まっている。特に欧州では債務だけでなく、成長にどう弾みをつけるかにも、もっと注意を向ける必要がある」と述べた。


 

(1)フランス

フランスの財政悪化に目をつぶっていた投資家は、予想外の解散総選挙で突然たたき起こされた形となった。昨年の財政赤字は国内総生産(GDP)比5.5%で、欧州連合(EU)の是正措置に直面している。

フランス国債の対ドイツ国債スプレッドは先月、下院選で極右の支持が高まったことを受けて、2012年の債務危機以来の水準に拡大した。

最終的には左派連合が勝利し、宙づり議会となることで、左派連合の歳出計画が制限される可能性があるが、財政健全化が妨げられるリスクもある。

フランス会計検査院は15日、財政が悪化しており、同国経済が次のマクロショックに対して「危険なほど無防備だ」と警鐘を鳴らした。

カナダ・ライフ・アセット・マネジメントのファンドマネジャー、デービッド・アルノー氏は「(国債価格には)恒久的に財政プレミアムが上乗せされるだろう」と指摘した。

(2)米国

米国も決して安泰ではない。

米議会予算局(CBO)は公的債務が34年までにGDP比97%から122%に増えると予想。これは1994年以降の平均の2倍以上に相当する。

11月の大統領選でトランプ氏が勝利するとの見方が強まっており、財政赤字拡大とインフレに対する懸念を背景にこのところ米国債利回りは上昇している。

一部の投資家は、トランプ氏が大統領選で勝利し、共和党が上下両院を制することが債券市場にとって最悪のシナリオだと指摘。

リーガル&ジェネラル・アセット・マネジメントのマクロ戦略責任者クリス・ジェフェリー氏はこのシナリオについて「財政赤字は現在GDP比6%で、そこからさらに新たな財政刺激策が打ち出される可能性がある」と述べた。

米国債は安全資産として魅力が緩衝材になっているが、長短金利差は1月以来の高水準付近で推移しており、長期債に圧力がかかっていることを示唆している。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中