最新記事
財政

G7の巨額債務が懸念材料に...次の火種はどこか?

2024年7月18日(木)19時50分

(3)イタリア

投資家はイタリアのメローニ首相が市場に優しいと評価している。だが、昨年の財政赤字はGDP比7.4%とEU加盟国で最大だった。このため、同国もEUの是正措置に直面しており、今後、市場の楽観論が試されることになる。

イタリア国債は他の高債務国の国債をアウトパフォームしている。ただ、フランス国債が売られた6月には一時、利回りが4カ月ぶりの高水準に上昇。不安が急速に拡散するリスクを浮き彫りにした。

今年は財政赤字のGDP比を4.3%に引き下げる目標を掲げているが、このところ財政目標は未達に終わっている。

同国では20年以降、2000億ユーロ以上のコストがかかる住宅改修工事の奨励策が導入されており、今後何年も債務に増大圧力がかかる。欧州委員会は公的債務が現在のGDP比137%から34年には168%まで上昇すると予測している。

ユニオン・インベストメントの債券・為替責任者、クリスチャン・コプフ氏は「イタリアではリスクに見合ったリターンが得られない」と語った。


 

(4)英国

英国は22年に当時の保守党政権が財源の裏付けのない減税を発表し、国債とポンドが急落。市場への介入と政策の転換を迫られた。

先の総選挙で誕生した労働党政権は緊縮財政を維持しながら経済成長を促すという公約を掲げており、公的債務がGDP比100%近くに達する中、課題に直面している。

英予算責任局(OBR)は昨年、公的債務が2070年代までにGDP比で300%を突破する可能性があると分析。財政リスクとして高齢化、気候変動、地政学的緊張を挙げた。

S&Pグローバルは債務の安定では経済成長の拡大が鍵を握ると指摘している。

(5)日本

日本の公的債務はGDP比で200%を超えており、先進国中最大だが、足元で懸念は浮上していない。

国債の大部分は国内で保有されており、ストレスの初期兆候が表れたからと言って国内の投資家が資金を引き揚げる可能性は低い。外国人の保有比率は約6.5%に過ぎない。

フィッチ・レーティングスは、日本の物価・金利上昇について、インフレで債務負担が軽減されるため、信用力にプラスになる可能性があるとの認識を示した。

ただ、懸念要因は残る。

政府は向こう10年間で利払い費が膨らみ、33年度には24兆8000億円(24年度は9兆8300億円)になると試算している。

このため、金融政策の正常化で国債利回りが突然跳ね上がることがないかは注目に値する。



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2024トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

2024091724issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年9月17日/24日号(9月10日発売)は「ニュースが分かる ユダヤ超入門」特集。ユダヤ人とは何なのか/なぜ世界に離散したのか/優秀な人材を輩出してきたのはなぜか…ユダヤを知れば世界が分かる

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏の近くで発砲、本人無事 FBI「暗殺未遂

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、5週ぶり増加=ベーカー

ワールド

ベネズエラ、米国人ら6人拘束 政府転覆計画に関与と

ワールド

G7外相、イランの弾道ミサイル輸出非難 ロシア支援
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ニュースが分かる ユダヤ超入門
特集:ニュースが分かる ユダヤ超入門
2024年9月17日/2024年9月24日号(9/10発売)

ユダヤ人とは何なのか? なぜ世界に離散したのか? 優秀な人材を輩出した理由は? ユダヤを知れば世界が分かる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウィリアムとヘンリーの間に「信頼はない」...近い将来の「和解は考えられない」と伝記作家が断言
  • 2
    ロシア空軍が誇るSu-30M戦闘機、黒海上空でウクライナ軍MANPADSの餌食になる瞬間の映像を公開
  • 3
    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺到...男性なら「笑い」になる、反応の違いは差別か?
  • 4
    【クイズ】自殺率が最も高い国は?
  • 5
    「もはや手に負えない」「こんなに早く成長するとは.…
  • 6
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢…
  • 7
    広報戦略ミス?...霞んでしまったメーガン妃とヘンリ…
  • 8
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座…
  • 9
    バルト三国で、急速に強まるロシアの「侵攻」への警…
  • 10
    「残飯漁ってる」実家を出たマドンナ息子が訴える「…
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    「もはや手に負えない」「こんなに早く成長するとは...」と飼い主...住宅から巨大ニシキヘビ押収 驚愕のその姿とは?
  • 3
    【クイズ】自殺率が最も高い国は?
  • 4
    アメリカの住宅がどんどん小さくなる謎
  • 5
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢…
  • 6
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン…
  • 7
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレ…
  • 8
    ロシア空軍が誇るSu-30M戦闘機、黒海上空でウクライ…
  • 9
    キャサリン妃、化学療法終了も「まだ完全復帰はない…
  • 10
    33店舗が閉店、100店舗を割るヨーカドーの真相...い…
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    エリート会社員が1600万で買ったマレーシアのマンションは、10年後どうなった?「海外不動産」投資のリアル事情
  • 3
    ウクライナの越境攻撃で大混乱か...クルスク州でロシア軍が誤って「味方に爆撃」した決定的瞬間
  • 4
    電子レンジは「バクテリアの温床」...どう掃除すれば…
  • 5
    年収分布で分かる「自分の年収は高いのか、低いのか」
  • 6
    「棺桶みたい...」客室乗務員がフライト中に眠る「秘…
  • 7
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレ…
  • 8
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン…
  • 9
    ウクライナ軍のクルスク侵攻はロシアの罠か
  • 10
    「あの頃の思い出が詰まっている...」懐かしのマクド…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中