イランの核武装への兆候か? イスラエルとの初交戦と大統領墜落死が示すもの
IRAN EXAMINES THE NUCLEAR OPTION
イランは既に中東では最多のミサイルとドローンを保有し、「抵抗の枢軸」と連携している。「抵抗の枢軸」とは、アメリカのジョージ・W・ブッシュ元大統領がイラク戦争前にイラン、イラク、北朝鮮を名指しした「悪の枢軸」に対抗してつくられた言葉で、大部分が非国家武装勢力という前例のないネットワークだ。この2つが、信頼し得る抑止力を確立しようというイランの数十年来の取り組みの核となってきた。
そんな状況が変わりつつあるのかもしれないとアインホーンは指摘する。「いくつかの進展がイランのエリート層の核兵器に対する賛成意見の一部を裏付けてきた」
「彼らはこれまで自国の従来型抑止力と代理勢力からの支援が十分な抑止力になると感じてきた。だが現在は、イランは今年4月の初の直接交戦が示すようにイスラエルから、ひょっとするとアメリカからも直接攻撃されかねない状況にある」
そしてアインホーンは別の見方を示した。「イランは以前は地域戦略がうまくいき、影響力を拡大し、敵を抑止していると感じていたかもしれないが、今ではアメリカがイスラエルや、もしかするとサウジアラビアなど湾岸諸国やエジプトも含めた有志連合を模索しているというものだ。イランと代理勢力に対抗するための連合だ」
だが近年、他の中東の国々の多くはイランとの戦略的競争にもかかわらずイランとの関係改善を選んでいる。アインホーンが注目しているのはイランの核のメッセージのもう1つの効果──他の国々が追随する可能性だ。特にサウジアラビアは核開発強化に興味を示し、エジプトとトルコにもその兆しが見られる。
国連軍縮研究所の元研究員サベットも同様の結論に達した。「イランの核実験強行を受けて他の中東諸国も核兵器国産をより真剣に考えるようになり(欧米の根強い抵抗は必至だが)、国際的な核不拡散体制にとって重大な課題となるはずだ」
「後戻りできないレベル」に
結局、イランの核開発の結果は確立される抑止力次第かもしれないとサベットは言う。
「地域の力の均衡(バランス・オブ・パワー)はイラン有利にシフトするはずだ。イランが今後も存亡の危機──少なくとも外交など他の方法では解決できない深刻な問題──に直面していると信じ続けるなら、敵に対する攻撃はより強く、よりあからさまになるだろう。一方、アメリカと中東の反イラン勢力の一部がイランとの合意を受け入れれば、中東情勢はいくらか安定し、解決困難だった問題が進展する可能性もある」