最新記事
イラン

イランの核武装への兆候か? イスラエルとの初交戦と大統領墜落死が示すもの

IRAN EXAMINES THE NUCLEAR OPTION

2024年6月27日(木)12時40分
トム・オコナー(外交・中東担当)

しかしながら現状の不安定さに追い打ちをかけているのは、アメリカ政府とイラン政府の間に信頼関係が根本的に欠けていることだ。かつて歴史的快挙とたたえられたイラン核合意という外交的打開策に代わって、合意に対する両国政府の強硬派の懐疑的な見方が優勢になった。

オバマ・トランプ両政権の米国家安全保障会議(NSC)核不拡散担当官で、現在はNPOのシンクタンクである核脅威イニシアチブ副代表代理のエリック・ブルーワーは、トランプ政権がイラン核合意から離脱した当時、イランは合意を遵守していたと指摘する。「アメリカの合意離脱を受けて、イラン政府が核開発を拡大したのは当然だ」


「バイデン大統領は合意復活に努めたが、結局駄目だった。その結果、今ではイランと何らかの合意に達することははるかに難しくなっている」とブルーワーは本誌に語った。「イランの核開発計画は後戻りできないレベルまで技術的進展を遂げている。地政学的環境、および欧米とロシア・中国との関係も15年に比べてはるかに厄介になっている」

ブルーワーはお手上げというわけではないとしながらも「合意の見込みは薄く、どんな合意なら可能で、そのためにはどうすればいいのかについて、枠にとらわれずに考える必要がある」と語った。

一方、中東ではより不確実性さを増す国際的秩序を背景に、ガザでの戦争によって不安定さが増している。

「イランが明日にも核保有国になろうとしているわけではないとしても、核政策の転換を示唆する発言は気がかりだ」とブルーワーは言う。「イランの核能力がかつてないほど向上し、ガザの紛争がイラン政府に核開発拡大もしくは核保有を決意させる方向に展開しかねないだけに、なおさらだ」

20241126issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年11月26日号(11月19日発売)は「超解説 トランプ2.0」特集。電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること。[PLUS]驚きの閣僚リスト/分野別米投資ガイド

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、FDA長官に外科医マカリー氏指名 過剰

ワールド

トランプ氏、安保副補佐官に元北朝鮮担当ウォン氏を起

ワールド

トランプ氏、ウクライナ戦争終結へ特使検討、グレネル

ビジネス

米財務長官にベッセント氏、不透明感払拭で国債回復に
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでいない」の証言...「不都合な真実」見てしまった軍人の運命
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 6
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 7
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 8
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 9
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 10
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 9
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 10
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中