トランプ番組「衝撃の舞台裏」を元プロデューサーが暴露...「詐欺」への加担を悔やむ

THE LONG CON

2024年6月20日(木)15時43分
ビル・プルイット(テレビプロデューサー)

newsweekjp_20240620041714.jpg

2004年3月、第2シーズンの出場者をオーディションで選ぶ(左から)ケプシャー、トランプ、ロス、プロデューサーのロブ・ラプランテ FRANK FRANKLIN IIーAP PHOTOーSLATE

せりふの用意はトランプだけ

そうこうしているうちに、ついにトランプの出番が来た。撮影場所はニューヨーク証券取引所だ。この資本主義と富を象徴する場所での撮影は、番組にリアリティーを与えた。

トランプがバルコニーからフロアにいる出場者に向かって最初の課題を発表する。隣には老弁護士のジョージ・ロスや、ホテル部門を任されているキャロリン・ケプシャーら側近が控えていた。

出場者たちは突っ立って、トランプの言葉に驚いたり、ほほ笑んだりするだけだ。

トランプに言ってもらうせりふを除いて、台本はなかった。ビーンストックが書いたせりふを口にするトランプは、その気がなくても相手を怒鳴りつけているように聞こえた。

1回のエピソードはそれぞれ3日で撮影した。初回の課題は、16人の出場者が男女別のチームに分かれて町でレモネードを売るというもの。売り上げは女性チームの圧勝だった。

出場者の1人を退場させる段になると、私たちプロデューサーはトランプ、ロス、ケプシャーと打ち合わせをした。トランプが「忙しい」と言うので、実際にレモネードの戦いを観察し、出場者を評価するのは腹心のロスとケプシャーだった。

『アプレンティス』は米連邦通信委員会(FCC)の監督下にあった。

1950年代にあるクイズ番組で、好感度が高く視聴率を取れる出場者にプロデューサーが事前に答えを教え、博識だが好感度の低い出場者には教えなかったことが露呈し、スキャンダルになった。『アプレンティス』の関係者がクビにする出場者をトランプに指示して勝敗を左右すれば、法に触れかねない。

ライオンの目で女性を品定め

トランプが「用事がある」と言ってミーティングを打ち切ると、私たちは役員室のセットを準備した。

いよいよ番組のフォーマットに従い、負けた男性チームが役員室に呼ばれて1人が脱落するのだ。制作陣は隣のコントロールルームに退き、成り行きを見守った。

8人の出場者は皇帝の前で戦う剣闘士よろしく、トランプの前で自分をアピールしてチームメイトをけなした。

トランプはユダヤ系の若者に対し、商才には「遺伝子」が関係すると思うかと尋ねた。ステレオタイプのタブーを冒しかねない質問に、若者は「思う」と即答。「あなたが両親から遺伝子を受け継いだように」自分もそうした遺伝子を持っていると、よどみなく話した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

再送-米、新たな対ウクライナ軍事支援近く発表 23

ビジネス

米・仏など主要経済国、債務水準上昇の抑制困難=S&

ビジネス

〔情報BOX〕パウエル米FRB議長の発言要旨

ビジネス

米インフレ鈍化示す一段のデータ必要、利下げ前に=F
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国EVの実力
特集:中国EVの実力
2024年7月 9日号(7/ 2発売)

欧米の包囲網と販売減速に直面した「進撃の中華EV」のリアルな現在地

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    H3ロケット3号機打ち上げ成功、「だいち4号」にかかる防災への期待...「攻めの姿勢」で世界に示した技術力の優位性
  • 2
    メーガン妃が「王妃」として描かれる...波紋を呼ぶ「帰ってきた白の王妃」とは?
  • 3
    自宅で絶叫...ウガンダから帰国した旅行者がはるばる連れ帰ってきてしまった「恐ろしいお土産」とは?
  • 4
    5つの独立運動に包囲された中国に「スイスモデル」と…
  • 5
    中国を捨てる富裕層が世界一で過去最多、3位はインド…
  • 6
    ウクライナ戦闘機、ロシア防空システムを「無効化」.…
  • 7
    テイラー・スウィフトに経済効果なし?...「スウィフ…
  • 8
    能登半島地震から半年、メディアが伝えない被災者た…
  • 9
    討論会惨敗の米民主党がここから「仮病」で大統領選…
  • 10
    ありなの? 飛行機の隣席に40kgの大型犬アメリカン…
  • 1
    中国を捨てる富裕層が世界一で過去最多、3位はインド、意外な2位は?
  • 2
    メーガン妃が「王妃」として描かれる...波紋を呼ぶ「帰ってきた白の王妃」とは?
  • 3
    爆破され「瓦礫」と化したロシア国内のドローン基地...2枚の衛星画像が示す「シャヘド136」発射拠点の被害規模
  • 4
    ウクライナ戦闘機、ロシア防空システムを「無効化」.…
  • 5
    ガチ中華ってホントに美味しいの? 中国人の私はオス…
  • 6
    ミラノ五輪狙う韓国女子フィギュアのイ・ヘイン、セク…
  • 7
    「大丈夫」...アン王女の容態について、夫ローレンス…
  • 8
    キャサリン妃は「ロイヤルウェディング」で何を着た…
  • 9
    衛星画像で発見された米海軍の極秘潜水艇「マンタレ…
  • 10
    ロシア軍部隊を引き裂く無差別兵器...米軍供与のハイ…
  • 1
    中国を捨てる富裕層が世界一で過去最多、3位はインド、意外な2位は?
  • 2
    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に
  • 3
    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア
  • 4
    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…
  • 5
    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車…
  • 6
    新型コロナ変異株「フラート」が感染拡大中...今夏は…
  • 7
    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…
  • 8
    メーガン妃が「王妃」として描かれる...波紋を呼ぶ「…
  • 9
    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思ってい…
  • 10
    我先にと逃げ出す兵士たち...ブラッドレー歩兵戦闘車…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中