トランプ番組「衝撃の舞台裏」を元プロデューサーが暴露...「詐欺」への加担を悔やむ
THE LONG CON
『アプレンティス』はトランプを将来を見通せるリーダーに祭り上げた(番組のバナーとトランプ、2006年) FRAZER HARRISONーGETTY IMAGESーSLATE
<「おまえはクビだ!」の決めぜりふでトランプを全米に知らしめたリアリティ番組『アプレンティス』。その裏側を秘密保持契約から解放された元プロデューサーが打ち明ける>
ドナルド・トランプ前米大統領が、政界進出前に出演したリアリティー番組『アプレンティス』。若手ビジネスパーソンがトランプに雇われる「栄光」を獲得するべく競い合う内容で、ちょうど20年前の2004年1月8日に第1回が放送された。
「大富豪を紹介しよう」と題されたその回は、1800万人が視聴。その数はすぐに2000万人に膨れ上がり、第1シーズンの最終回には2800万人に達した。
エミー賞の「最優秀勝ち抜き番組賞」にノミネートされるなど業界の評価も高く、姉妹番組『セレブリティー・アプレンティス』と共に、10年以上にわたって米3大ネットワーク局NBCのゴールデンタイムに放送された。
同時にこの番組は、地元ニューヨークのタブロイド紙をにぎわせる薄っぺらい経営者だったトランプを、全米の大人も子供も一目置く著名経営者に押し上げた。
トランプの資産と地位と人格と野心について、大衆が誤解するよう巧みに誘導したわけだが、それがやがて全米を巻き込むペテンを助けることになろうとは、私たち制作者は思いもしなかった。
番組の制作に関わったプロダクションやテレビ局、それにキャストやスタッフなどで、意図的にこのペテンに関わった人間はいない。ただし、この番組が事実を、とりわけトランプの素性に関する事実を、いいかげんに扱ったことは間違いない。
私は『アプレンティス』全15シーズンのうち、第1シーズンと第2シーズンに関わった4人のプロデューサーの1人だ。全員が厳しい秘密保持契約(違反者には500万ドルの罰金が科されるなど)に縛られたが、その期間がようやく今年で切れた。
今秋の米大統領選でトランプが返り咲きを目指すなか、そしてトランプによる詐欺をめぐる裁判が進むなか、何が現在のトランプをつくったのかについて、私が知っていることを明かせる時がようやく来た。その一部には、今もぞっとさせられる。
リアリティー番組にも台本があるとよく言われるが、100%でっち上げのリアリティー番組はまずない。それでも、全てのリアリティー番組には捏造の要素がある。
現実をベースに特定の状況を演出し、それさえも現実であるかのように視聴者に錯覚させるのだ。ベースとなる背景が本物らしいほど、演出された状況も本物だと受け止められやすい。
このペテンのからくりは昔から存在する。16世紀に生まれた英語表現「袋の中の豚を買う(buy a pig in a poke)」がそれで、「中身を調べずに物を買う」ことを意味する。購入者(視聴者)がだまされたことに気が付くのは、ずっと後になってからだ。