最新記事
台湾

「ひまわり運動」の再来...頼清徳・新総統が「3万人以上の大規模デモ発生」に触れたくない理由とは?

The Flowers Are Back

2024年5月29日(水)16時52分
ブライアン・ヒュー(ジャーナリスト)

改革法案に反対する人々が特に怒りを向けているのが、民衆党の黄国昌(ホアン・クオチャン)院内総務だ。

黄は10年前にひまわり運動を率いたリーダーの1人だった。しかし黄が民衆党および同党の柯文哲(コー・ウェンチョー)党首、さらには国民党とも手を組んで以降、多くの人が彼を「裏切り者」と見なしている。民衆党は今回、単独では立法院の過半数に届かない国民党に協力し、共同で改革法案を支持した。

民衆党は自らを、台湾の2大政党の対立・分断を超越する第3の選択肢として位置付けている。だが今回の改革法案のような物議を醸す問題で国民党と連携したことにより、民衆党には「国民党を支援するが立場は下の政党」というイメージが強まりそうだ。

21日夜、デモ参加者が膨れ上がるなか、立法院庁舎の周りには4つの特設ステージが組まれ、参加者がそこで自由に発言を行った。このとき多くの若者が「若い世代は一様に黄国昌と民衆党を支持している」というイメージを覆したいと訴えた。

民衆党は、頼が総統に就任する前日の19日に民進党本部前で抗議デモを展開。立法院改革の一環として、改革法案への支持を呼びかけた。屋外でデモが行われていたとき、立法院の中では民進党と国民党の議員たちが改革法案をめぐる議論を続けていた。

改革法案をめぐる投票は50回以上行われ、翌20日の朝までに議員同士の衝突が何度も起きた。立法院では17日にも民進党と国民党の議員の乱闘騒ぎが発生しており、民進党議員4人と国民党議員1人がけがをした。17日は深夜0時頃に立法院の審議が一時中断となり、抗議デモも同時に終了した。

5日間で爆発した憤り

17日には立法院での乱闘騒ぎの後、改革案に反対する抗議デモも自然発生的に行われた。このときの参加者は、数百人にとどまった。

台湾で21日のような大規模な抗議デモが行われたことは、ひまわり運動以降の10年間で数えるほどしかない。17日には数百人だったデモ参加者が21日には数万人に増えたという事実は、つい最近までほとんど議論されなかった問題が、わずか数日で何万人もの人を抗議行動に駆り立てるほど大きなものになったことを示している。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 3
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 6
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 7
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 8
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 9
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 10
    強烈な炎を吐くウクライナ「新型ドローン兵器」、ロ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中