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「ひまわり運動」の再来...頼清徳・新総統が「3万人以上の大規模デモ発生」に触れたくない理由とは?

The Flowers Are Back

2024年5月29日(水)16時52分
ブライアン・ヒュー(ジャーナリスト)

頼清徳(ライ・チントー)

新総統の頼は就任演説で与野党の融和を呼びかけたが(5月20日) CARLOS GARCIA RAWLINSーREUTERS

10年前の教訓はどこへ

反対派は、国民党と民衆党が改革案を利用して政敵を攻撃したり、機密情報の開示を強要して国の安全保障を危険にさらすことを恐れている。台湾では昨年秋、国民党が立法院国防委員会の共同委員長に指名した馬文君(マー・ウエンチュン)が台湾製潜水艦プログラムに関する情報を中国と韓国に漏らしたとして告発された。

国民党は今回の法案を提出する前にも、賛否両論のある司法院の特別捜査部門(SID)を復活させ、法執行機関ではなく立法院の直接の支配下に置こうとしていた。

SID復活の試みが物議を醸したのは、この部門が国民党政権下で政敵を攻撃するのに利用されていたためだ。

例えば国民党政権当時に馬英九(マー・インチウ)総統と対立していた王金平(ワン・チンピン)立法院長が盗聴された問題や、民進党出身の初の総統になった陳水扁(チェン・ショイピエン)が2期目を終えた後に汚職に問われた件には、SIDが関与していた。問題が大きくなったため、蔡英文(ツァイ・インウェン)が総統に就任するとSIDは解体された。

国民党は立法院の権限拡大を狙う今回の改革法案を、行政部門に対する政府の監督能力を強化するための手段と位置付けている。だが反対派は、国民党が権威主義的な過去を思い起こさせる手法で、再び権力を掌握しようとしているとみている。

市民をさらに怒らせたのは、国民党が賛否両論のある新たな法案について、またも委員会審議を行わなかったことだ。ひまわり運動のきっかけとなった貿易自由化協定の強行採決と同じやり方に、国民党は10年前の教訓を何も学んでいないという批判の声が高まっている。

ひまわり運動は、台湾の社会運動史でも有数の、あるいは最も重要な出来事と考えられている。14年3月30日に台北で抗議デモに参加した人は、推定50万人に上った。

5月21日のデモ参加者には、かなりの数の若者が含まれている。彼らは10年前にはまだ若すぎて抗議デモに参加できなかったが、ひまわり運動の精神を受け継いでいると語った人たちが多かった。ひまわり運動にも参加していたという人たちは、10年たった今も当時と同じような問題ばかりが論争の的になっていると嘆いた。

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