最新記事
反イスラエル抗議活動

デモを強制排除した米名門コロンビア大学の無分別...メディアも閉め出し

Columbia’s Bad Choice

2024年5月7日(火)12時50分
アレクサンダー・サモン
コロンビア大学に突入した警察 DAVID DEE DELGADOーREUTERS

コロンビア大学に突入した警察 DAVID DEE DELGADOーREUTERS

<全米の大学に広がるイスラエルへの抗議運動、言論の自由を軽んじ警察に介入を求めたコロンビア大学学長の罪の重さ>

イスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの攻撃に対する抗議運動が全米の大学で広がるなか、4月30日、ニューヨーク市の名門コロンビア大学のネマト・シャフィク学長は驚きの決定を下した。ニューヨーク市警に抗議デモの強制排除を要請したのだ。

エリック・アダムズ市長が同大の抗議デモは「外部勢力に乗っ取られている」と声明を出し、「事態が悪化する前」に退去せよと学生を脅した後、100人を超える警官がキャンパスに突入。非暴力の抗議を行っていた学生100人余りを拘束した。強制排除は4月18日以来2度目だ。

大学当局がメディアを閉め出したため、現場を取材できたのは学生記者だけだった。

彼らによれば、警察はデモ隊が30日未明に占拠した校舎「ハミルトン・ホール」に銃を構えて突入し、催涙ガスを使用し、学生たちを力ずくで引きずり出した。結果、少なくとも1人の学生が意識不明に陥ったという。

シャフィクは5月15日に予定される卒業式の少なくとも2日後まで、構内に警官を常駐させるよう市警に要請した。大学の広報担当は「ハミルトン・ホールが占拠され、破壊され、封鎖されたと聞いた以上はほかに選択肢はなかった」と、声明で述べた。

newsweekjp_20240507032911.jpg

4月、下院で「反ユダヤ主義への対応」を説明するシャフィク KEN CEDENOーREUTERS

選択肢がなかった?

選択肢ならいくらでもあった。シャフィクが警察に2度目の介入を要請する数時間前に、ロードアイランド州のブラウン大学はある発表を行った。学生側はかねてイスラエルを支持する企業に大学の基金を投資することをやめるよう求めており、理事会がこの提案の採決に同意したのだ。

学生新聞ブラウン・デイリー・ヘラルドによれば、学生側の提案は2020年に大学の「投資慣行における企業責任に関する諮問委員会」が「イスラエルによるパレスチナ占領を助長する企業」を特定し、投資の引き揚げを勧めたことに基づいている。

理事会の譲歩を受け、学生たちは抗議運動のために設置したテントを速やかに撤去することに同意した。

実はブラウン大学のクリスティーナ・パクソン学長は、全米を席巻する学生逮捕の動きを率先して進めた人物。昨年12月以来、非暴力の抗議運動を行っていた同大の学生61人を逮捕させた。

だがパクソンには、警察による報復行為をエスカレートさせないだけの分別があった。シャフィクと違ってパクソンの名前を報道で見ないのは、この分別のおかげだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国副首相が米財務長官と会談、対中関税に懸念 対話

ビジネス

アングル:債券市場に安心感、QT減速観測と財務長官

ビジネス

米中古住宅販売、1月は4.9%減の408万戸 4カ

ワールド

米・ウクライナ、鉱物協定巡り協議継続か 米高官は署
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中