安保理ガザ停戦決議「棄権」で亀裂深まる米イスラエル、「全面衝突」回避できるか...双方の思惑は
3月25日、 バイデン米大統領とイスラエルのネタニヤフ首相の関係は、パレスチナ自治区ガザでの戦闘開始以来、最も冷え込んでしまった。写真は2023年10月、テルアビブで会談する両首脳。代表撮影(2024年 ロイター)
バイデン米大統領とイスラエルのネタニヤフ首相の関係は、パレスチナ自治区ガザでの戦闘開始以来、最も冷え込んでしまった。
国連安全保障理事会で25日、ガザでの即時停戦を求める決議案が採択されるのを、米国が棄権という形で「容認」し、ネタニヤフ氏がこれを激しく非難したためだ。
ネタニヤフ氏は、イスラエル政府高官を今週ワシントンに派遣してガザ最南部ラファへの攻撃計画について協議を行う予定だったが、突然キャンセル。ガザで人道危機が急速に拡大する中で、何とかしてネタニヤフ氏に、パレスチナ市民にとって最後の比較的安全な地帯となったラファに攻撃する以外の選択肢を検討させたい米国側の取り組みは後退することになった。
ラファ攻撃をちらつかせるイスラエルの姿勢により、同国と米国の長年にわたる同盟は不安定化。ネタニヤフ氏がバイデン氏の要請を無視して攻撃に踏み切った場合、米国が軍事支援を制限する可能性も取りざたされつつある。
過去の米政権で中東地域の紛争調停を担当していたアーロン・デービッド・ミラー氏は「バイデン政権とネタニヤフ氏の信頼関係が崩れつつあることを物語っている。この危機を慎重に管理できなければ、状況は悪化するばかりになる」と警鐘を鳴らす。
国連の場ではイスラエルを擁護するという米国の伝統的な外交政策を守り続けてきたバイデン政権が今回棄権を決めた裏には、ネタニヤフ氏の振る舞いに対する米国の不満の蓄積が透けて見える。
11月の大統領選で再選を目指すバイデン氏自身も、同盟諸国だけでなく、与党民主党内からもイスラム組織ハマスに対する軍事活動を続けるイスラエルを抑制することを求める声が強まっているという現実に直面している。
これに対してネタニヤフ氏は連立相手の極右をはじめとする国内各方面から、パレスチナ側に強硬姿勢を続けるよう突き上げられている。同氏は人質家族には解放に向けてできることは何でもすると約束しなければならない半面、辞任要求の抗議デモが頻繁に行われるなど政治基盤は決して強固ではない。
<バイデン氏の選択肢>
米国は、ガザで戦闘が始まってからこれまでずっと「停戦」という言い回しを使うのをできるだけ避け、国連ではイスラエルに不利な決議案に対して拒否権を行使し続けてきた。
ところがその間にガザでは飢餓が迫り、多くのパレスチナ市民が犠牲になる中で停戦を訴える国際世論も強まるばかりとなったことで、米国は今回の決議案の投票では棄権を選択した。