最新記事
ガザ紛争

安保理ガザ停戦決議「棄権」で亀裂深まる米イスラエル、「全面衝突」回避できるか...双方の思惑は

2024年3月26日(火)21時43分
ロイター
ネタニヤフ バイデン

3月25日、 バイデン米大統領とイスラエルのネタニヤフ首相の関係は、パレスチナ自治区ガザでの戦闘開始以来、最も冷え込んでしまった。写真は2023年10月、テルアビブで会談する両首脳。代表撮影(2024年 ロイター)

バイデン米大統領とイスラエルのネタニヤフ首相の関係は、パレスチナ自治区ガザでの戦闘開始以来、最も冷え込んでしまった。

国連安全保障理事会で25日、ガザでの即時停戦を求める決議案が採択されるのを、米国が棄権という形で「容認」し、ネタニヤフ氏がこれを激しく非難したためだ。

ネタニヤフ氏は、イスラエル政府高官を今週ワシントンに派遣してガザ最南部ラファへの攻撃計画について協議を行う予定だったが、突然キャンセル。ガザで人道危機が急速に拡大する中で、何とかしてネタニヤフ氏に、パレスチナ市民にとって最後の比較的安全な地帯となったラファに攻撃する以外の選択肢を検討させたい米国側の取り組みは後退することになった。

ラファ攻撃をちらつかせるイスラエルの姿勢により、同国と米国の長年にわたる同盟は不安定化。ネタニヤフ氏がバイデン氏の要請を無視して攻撃に踏み切った場合、米国が軍事支援を制限する可能性も取りざたされつつある。

過去の米政権で中東地域の紛争調停を担当していたアーロン・デービッド・ミラー氏は「バイデン政権とネタニヤフ氏の信頼関係が崩れつつあることを物語っている。この危機を慎重に管理できなければ、状況は悪化するばかりになる」と警鐘を鳴らす。

国連の場ではイスラエルを擁護するという米国の伝統的な外交政策を守り続けてきたバイデン政権が今回棄権を決めた裏には、ネタニヤフ氏の振る舞いに対する米国の不満の蓄積が透けて見える。

11月の大統領選で再選を目指すバイデン氏自身も、同盟諸国だけでなく、与党民主党内からもイスラム組織ハマスに対する軍事活動を続けるイスラエルを抑制することを求める声が強まっているという現実に直面している。

これに対してネタニヤフ氏は連立相手の極右をはじめとする国内各方面から、パレスチナ側に強硬姿勢を続けるよう突き上げられている。同氏は人質家族には解放に向けてできることは何でもすると約束しなければならない半面、辞任要求の抗議デモが頻繁に行われるなど政治基盤は決して強固ではない。

<バイデン氏の選択肢>

米国は、ガザで戦闘が始まってからこれまでずっと「停戦」という言い回しを使うのをできるだけ避け、国連ではイスラエルに不利な決議案に対して拒否権を行使し続けてきた。

ところがその間にガザでは飢餓が迫り、多くのパレスチナ市民が犠牲になる中で停戦を訴える国際世論も強まるばかりとなったことで、米国は今回の決議案の投票では棄権を選択した。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ロシアがICBM発射、ウクライナ空軍が発表 初の実

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部の民家空爆 犠牲者多数

ビジネス

米国は以前よりインフレに脆弱=リッチモンド連銀総裁

ビジネス

大手IT企業のデジタル決済サービス監督へ、米当局が
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 2
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 5
    「ワークライフバランス不要論」で炎上...若手起業家…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 8
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 9
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 10
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国」...写真を発見した孫が「衝撃を受けた」理由とは?
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    建物に突き刺さり大爆発...「ロシア軍の自爆型ドロー…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶり…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中